「認知症」と「健忘症」のもの忘れ、決定的な違い 認知症予備軍「MCI」の可能性はありませんか
「以前に、どこかで会ったことがある人なんだけど、名前がどうしても出てこない」
「家のカギをどこに置いたか忘れてしまった」
こうしたもの忘れは健忘症によるもの忘れですが、特徴としては、出来事の一部が思い出せないだけで、出来事の全体が思い出せないわけではありません。
これに対して、認知症によるもの忘れは、出来事の全体を忘れてしまいます。例えば、昨日の昼食に何を食べたかをすぐに思い出せないのは、健忘症によるもの忘れです。昼食を食べたことは覚えており、記憶をたどってよく考えたり、何かヒントがあれば、何を食べたか思い出すことができます。
一方、さっき朝食を食べたにもかかわらず、朝食を食べたこと自体を忘れてしまい、また食べようとするのは認知症によるもの忘れです。仕事をしている人であれば、重要な会議に出席しなければならないことを完全に忘れてしまうといったケースは、認知症によるもの忘れが強く疑われます。
こうした認知症によるもの忘れは、認知症の当事者本人が困るのはもちろん、周囲の人たちにも多大な迷惑をかけてしまいます。こうした「困った経験」を何度か経験した際には、MCIではなく、認知症を強く疑ったほうがよいと思われます。
スムーズにできていたことに時間がかかるようになったら
これは、今までスムーズにできていたことに時間がかかったりしたときに、「何か違うぞ」と違和感を抱くことができればMCIで、それができなくなると認知症、ということです。例えば、約束した予定を忘れてしまったときでも、「あれ、誰かと約束をしていたような気がするぞ」と、約束をしたこと自体は覚えている場合などは、MCIに当てはまります。
一方、認知症の場合は「約束をしたこと自体がすっぽりと頭から抜けてしまう」ため、自分が何かを忘れたことさえも自覚することができません。例えば、医療機関で患者さんの問診をしていると、ご本人はあまり困っていないけれども、家族が困って、家族に連れられて来院されるケースがあります。こうしたケースでは、次のような会話が交わされます。
本人 「おかげさまで、とっても元気です。何も困ることはありません」
私 「もの忘れはどうですか?」
本人 「もの忘れなんかしていませんよ」
家族 「いえいえ。最近、もの忘れがひどくて、さっき言ったことも忘れてしまうんです」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら