「認知症」と「健忘症」のもの忘れ、決定的な違い 認知症予備軍「MCI」の可能性はありませんか
認知症は現代医学において、治療することはできません。ただ、その進行を食い止めるのが関の山です。薬は、治しているのではなく、進行を遅らせているだけなのです。しかし、それが前段階のMCIなら予防することが可能です。つまり、MCIとは、認知症になるかならないかを決める「最後の分かれ道」と言っても過言ではありません。
私は認知症専門医として、これまで30年以上にわたって、のべ13万人以上の認知症の方々を診てきました。もちろん、その前段階であるMCIと診断した方も数多く診てきました。中には、早めに自身の異変に気づいたことで、MCIであることを自覚し、適切な予防によって回復した方々も数多くいます。
その一方で、MCIと診断されたのちに、病院を訪れることなく、次にお会いしたときにはすでに認知症になってしまっている方もいました。これほど重要であるにもかかわらず、認知度がそれほど高くなく、見逃されやすい段階がMCIなのです。
認知症の人より少ないわけがない
MCIは認知症になる前の段階であるため、厚生労働省は病気として扱っていません。そして、MCIは病気ではないため、現在、MCIの人が日本にどれぐらいいるのか、どのくらいの人が医療機関に通院しているのか、残念ながら不明です。
認知症とMCIに関する数値としては、少し古くなりますが、2013年に厚生労働省が発表した推計があります。これによると、約10年前の2012年時点で認知症の人は約462万人、認知症予備軍であるMCIの人は約400万人いると推計されています。
この数値を見て、私が最初に思ったのは、「認知症の人が約462万人いるのなら、MCIの人がそれより少ないはずはない。約400万人という推計は少なすぎるのではないか」ということです。私のこれまでの経験から言えば、MCIの人は認知症の人の1.5〜2倍はおり、認知症の人よりもMCIの人のほうが少ないというのは、ちょっと考えられないことなのです。
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