中国主導「AIIB」不参加は、良策か失策か

第一生命経済研究所・熊野英生氏の見解

日本では、黒田日銀総裁の強烈な量的・質的金融緩和が実施されて、超円高から円安局面へと軌道修正が行われた。為替に関する議論は、もっぱら円高ではなく円安が良いのか、あるいは円安が進むと輸入物価の上昇で痛みがある、といった点に傾きやすかった。

しかし、本筋は、円の取引量が増えることで、為替の過度な変動が起こりにくくなることである。為替レートは不安定でなく、安定していることが理想だ。そのためには、海外向けに円建ての融資を増やすと同時に、非居住者による円建ての直接・証券投資も増えることが都合が良い。

中国の思惑とは?

一方、現状のような日銀の超低金利がずっと継続していると、先行き円キャリートレードが活発化して、一時的に大幅な円安が進み、その後、ポジションが解消されて逆転円高が起こるという懸念も根強くある。投機マネーによるかく乱は、為替レートが安定化する理想像とは正反対の状態である。

中国には、AIIBを主導してドル偏重の外貨準備の運用先を多様化したいという思惑がある。この課題は、日本と共通する。アジアのインフラ投資向けに資金を振り向けて、為替変動リスクにさらされにくい運用をしたいという気持ちもあるだろう。中国との間で、共通する利害はまだ多く存在するはずだ。

国際金融の未来図を考えるとき、日本政府は、中国などアジア諸国との間で、共通利益を追求する構想を提示していくことが課題だろう。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(http://jp.reuters.com/news/globalcoverage/forexforum)

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