ベンチャーブームに浮かれる面々にモノ申す サイバー藤田晋社長が警告する「緊張の緩み」

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藤田晋(ふじた・すすむ)●1973生まれ。98年サイバーエージェント設立、社長就任(現任)。2000年東証マザーズ上場。14年東証1部へ市場変更。

――サイバーエージェントでは10年前から投資育成事業を手掛けており、成績もいい。

結局、いい会社は外部からの関与はあまり必要ない。われわれ自身も別にベンチャーキャピタル(VC)にお世話になったわけでもなく、会社を大きくしてきた。

基本的には応援する立場で、相談を受ければアドバイスをしたり、誰か紹介してほしい人がいたら紹介したりしてあげるレベルの話。VCを本業にしていると何か仕事がしたくなるが、ヒマなくらいでちょうどいい。

投資したら、あとは馬券を握りしめているような感じ。自分が起業した経験もないベンチャーキャピタリストが、もっともらしく外部アドバイザーとして事業の評価とか起業のアドバイスをしているのを見ると違和感がある。

――投資先企業からの相談は多い?

人による。クラウドワークスの吉田(浩一郎社長)さんとかウォンテッドリーの仲(暁子代表)さんは、かなり頻繁に質問に来られる。もちろん株主に許可を得る必要なんて一切ない。ただの相談ですね、本当に。

さっき「ベンチャーキャピタルにお世話になってない」と言ったが、やはりメンター(助言者)としての存在は大きかった。僕も宇野(康秀、USEN会長)さんと熊谷(正寿、GMOインターネット会長兼社長)さんには、上場前からお世話になった。独立系VCの人でも自分が起業するようにVCを立ち上げた人は、起業家に近いのである程度は分かっていると思う。

「渋谷村」に入れるかがとても重要だ

――どうやって投資先を探していますか。

行き当たりばったり。探すというより、繋がった先で投資を決めている。何だかんだで「渋谷村」みたいなものがIT業界はあるので、夜飲んでいる時に繋がったり、信頼できる人から紹介されたり、そうしたケースが多い。

ネット系のいい会社は、あまり資金を必要としておらず、いくらでも出し手が集まる。結局はコネというか「ちょっと入れさせてよ」って感じで決まる。これは近くにいるからできること。われわれが有利なポジションにいることに気が付いて、投資育成事業を始めた。実際にネット系っておカネもかからないので、出資を断る会社は多い。今はクラウドも使えるし、ネット系のビジネスは本来お金がかからない。

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――政府系ファンドも投資が活発です。

政府系も独立系VCも、どこもいい加減な投資はしていない。だから投資されるベンチャーがはっきりしている。全然お金が回らないベンチャーは山ほどある中で、一部のスター性がある会社に殺到してバブルになっているだけ。みんながいいと思う会社は、人もカネも取引先も集まってどんどんよくなる。一方で資金が回ってこないベンチャーに投資したいかと言われると僕もしたくない。

――事業会社によるVC、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)が増えており、将来の買収案件を物色するケースも多い。

たまに大企業の投資で理解できないことがあって、投資した分だけ何か権利を得ようとしている。それは本末転倒で、投資させてもらった立場で会社を支援するべき。投資した分だけ回収しようみたいな考えは、経営を邪魔しているようなもの。よちよち歩きのベンチャーに、そうしたスタンスで臨むことは真逆の発想。契約で縛ろうとする会社もあるし、そういうスタンスでは話にならない。

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