日銀総裁人事なぜ世界から異例の注目集まるのか 市場は雨宮氏なら円安に、中曽氏なら円高と予想

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日本銀行の次期総裁の人選が最終段階を迎え、市場は各有力候補者の政策スタンスに対する見極めとそれに合わせた準備を進めている。誰が第32代総裁になるのか。今回の決定は円相場から米国債まで各市場を大きく揺るがす可能性がある。

現副総裁の雨宮正佳氏が選ばれれば円安につながり、中曽宏前副総裁なら円高との見立てが多い。山口広秀氏などサプライズ人事となれば、超金融緩和政策の早期終了期待が一気に高まり、大幅な円高や世界的な債券利回りの上昇につながる可能性がある。

昨年12月の日銀によるイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の修正は世界の市場に衝撃を与え、今年1月の緩和策維持の決定も多くの市場を動かした。それだけに今回の総裁人事は異例の注目を集めている。

以下は各候補者が指名された場合に予想される市場の反応となる。各候補者のプロフィルはこちら。

雨宮正佳氏

雨宮氏は黒田総裁の後任として有力視されており、一部の市場関係者は同氏が指名される確率を40-50%と読む。同氏を黒田緩和の継承者と見なすのは不当かもしれないが、初期反応は円下落、日本株は大幅高となる可能性が高い。

スペクトラFXソリューションズのブレント・ドネリー氏は先月のリポートで、雨宮氏が指名された場合、ドル・円が2円50銭上昇する可能性があると予想した。 

  

みずほ証券チーフデスクストラテジストの大森翔央輝氏は、雨宮氏の場合、「金融政策の見通しについて政府から指針が示されるまで、初期反応はリスクオンラリーだろう」と予想。「市場は取りあえずマイナス金利政策とYCCの長期化を織り込むことになる」と話した。

中曽宏氏

  中曽氏は雨宮氏よりややタカ派とみられているが、トレーダーらは総裁交代による日銀のスタンス変化をすでに予想しているため、株式や債券のボラティリティーはより抑制されそうだ。

それでも同氏が指名されれば、日銀が10年債利回りを金利操作の対象とすることを止めるかもしれないとみて、ドル・円は2円程度下落する可能性があると、スペクトラのドネリー氏は予想する。 

  

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、中曽氏の場合、「元々のキャリアとして金融システムなどにフォーカスされてきたので、マイナス金利やYCCの副作用に目が向けられやすいのではないかとの市場の思惑が出てくる」と予想。「日銀を離れて5年程度たってもいるため、政策変更しやすい」とみる。

中曽氏は2日、都内で開かれたシンポジウムで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のビジネス諮問委員会(ABAC)で金融問題を取り扱うタスクフォースの議長を担うことを明らかにし、為替市場が一時円安に振れる場面があった。

中曽前日銀副総裁、APEC諮問委で金融作業部会議長を担う (2)

山口広秀氏

   有力候補者の中で最もタカ派とされる山口氏が選ばれた場合、政府が日銀の明確な政策転換を求めているという最強のシグナルとなり、市場に最も大きなボラティリティーをもたらすことになるだろう。

シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは、円は1ドル=127円に向けて上昇する可能性があると指摘。 みずほ証の大森氏は、日本株は1%程度下落する可能性があり、外国人は日銀の長期金利の上限を試しに勢いづくかもしれないとみている。

SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは「山口氏が選ばれると、日銀が金融政策の正常化に向けてかじを切ったイメージになる」とし、「イールドカーブは全般的に上にシフトすることになるのではないか」と予想した。

影響はさらに広範に及び、国内の金利上昇により海外資産から日本への資金回帰が起こる可能性がある。豪コモンウェルス銀行のエコノミスト、スティーブン・ハルマリック氏とジョセフ・カパーソ氏(シドニー在勤)は、日本の投資家は豪国債と米国債をそれぞれ3%、4.5%程度保有しているため、これら国債に悪影響を及ぼしかねないとみている。

  

昨年12月の日銀による突然の10年債利回りの許容変動幅拡大は、政策変更のいかなる兆しも国内外に衝撃を与えうることを如実に示した。円と日本の債券利回りは急伸し、米国債利回りも上昇。米株先物から豪ドル、金に至るまであらゆるものが影響を受けた。

その他

ストラテジストらによると、コロンビア大学教授の伊藤隆敏氏や浅川雅嗣アジア開発銀行(ADB)総裁、日本総合研究所理事長の翁百合氏といった他の候補者が次期総裁に選ばれる可能性は低いそうだ。

野村証の後藤氏は、大きな組織を率いるため、マネジメント経験も重視されるとした上で、浅川氏は「適任ではあるが、二代続けて黒田総裁と同じようなキャリアは敬遠されやすい」と指摘。「女性で政権のイメージを上げようとする可能性もあるが、伊藤氏や浅川氏、翁氏は総裁というより副総裁候補という方が正しい印象」と話した。

 

--取材協力:、、.

(中曽氏の2日の発言を追加しました)

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著者:Matthew Burgess、小宮弘子

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