「課長どまりと幹部になる人」運と実力の作用の差 「絵に描いたようなエリート街道」は極めてまれ

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最後に、③ニッチな領域を駆け上がるルート。ここで言うニッチな領域とは、知的財産のような特殊な分野やその会社で傍流の事業部門のことです。また、「当社では女性社員と外国人社員が少ない現状を改善するために、経営幹部に女性枠・外国人枠を設けています」(素材・人事部長)というのも、この範疇でしょう。

このうち特殊な分野は社内の認知度が低いので、経営幹部や人事部門に自分をどうアピールし、認めてもらうかが課題になります。ここで、大きく異なる2つの意見がありました。

「経営幹部や他部門と円満な人間関係を作ることが、最大のポイントでしょう。ニッチな部門では自分の殻に閉じこもるタイプが多いですが、殻を破って積極的に他部門と交流し、良好な人間関係を築いた人が、結果的に経営幹部に昇進しています」(建設・人事部門マネジャー)

「ニッチな部門の人材を適切に評価するのは困難で、その部門の中で『やっぱりこの人でしょ』と評価されている人材を昇進させています。自部門の活動や存在意義をアピールするために、軋轢を恐れず他部門と喧嘩するうるさいタイプが、部門内の信頼を得ています。ただ、完全に戦争状態になってはだめで、相手を本気で怒らせないよう、上手に喧嘩していますね」(食品・経営者)

どうやらニッチな分野で駆け上がる成功法則はなさそうですが、能力・実績よりも人間関係がポイントになっているということは言えそうです。なお、「ニッチな部門では人間関係が苦手な人が多いので、ちょっとした政治力があれば、ライバルが多い他の部門よりもずっと昇進しやすいはず」(小売り・人事担当役員)という意見がありました。

直属の上司の存在は大きい

ところで、今回のヒアリングで、直属の上司の影響を指摘する意見が複数ありました。①②③のいずれにおいても、直属の上司に恵まれるかどうかが、部下の昇進のカギだというのです。

「ある人が実績を上げて花形部署に異動すると、部下を引き連れていきます。そして、部下は花形部署で実績を上げて、“正のサイクル”が回り始めます。やはり上司からすると、知らない部署で働くとき、よく知っている部下が配下にいると、安心できますからね」(物流・人事担当役員)

「ニッチな分野は部門を超えた異動が少ないタコ壺の世界なので、濃厚な師弟関係ができます。結果的に当社では、上司から直属の部下へ、さらにその直属の部下へと幹部のポストが継承されています。本当はそれではいけないのですが」(機械・人事部長)

「上司ガチャ」という言葉がある通り、自分を引き上げてくれる良い上司に巡り合うかどうかは、運次第。さきほど「本人の努力と心掛けで出世コースは大きく変わってくる」と書きましたが、同時に運の要素も大きいということなのでしょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/takeshi.hioki.10
公式サイト:https://www.hioki-takeshi.com/
 

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