災害時に見るCSRのあり方《1/2》--初動の最大の被災地支援は義援金

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 大林組では、翌12日の昼には、ブルーシート1万枚、仮設トイレ300台など緊急支援物資の搬送を始めている。ゼネコン各社は、自社のホームページ上で活動を細かく報告しており、どのような活動を行ったか時系列的に確認できる。こうした情報開示の方法も業界ごとに差が出ており、透明性の高い建設業界は1つのモデルケースになると考える。

セブン&アイ・ホールディングスも対応が素早い。11日にミネラルウォーター3万本、菓子パン1000個など、翌12日には宮城県、岩手県の災害対策本部に毛布1万枚、パック入りご飯4800個など、給水車も1台派遣している。搬送経路も陸路とヘリコプターを使って届けることを宣言し、被災地への到着日程も注釈つきで開示している。物流機能を完備する同社の強みをいかんなく発揮している好事例だろう。

ソフトバンクは、12日に「ソフトバンクWi−Fiスポット」の無料開放に踏み切っている。ソフトバンクのユーザーでなくても、誰でもサービスエリア内は高速通信が可能となっている。翌13日は1週間の限定でメールを無料化する対策を発表している(同時に緊急以外の通話やメールを控えるように呼びかけ)。

グリコは12日から同社のシンボル的存在である大阪道頓堀にあるグリコの巨大屋外看板の電気を消している。震災による節電の一環であるが、道頓堀の煌煌と輝くネオンの中でグリコだけが看板を消灯しているのは、かえって同社の対応の早さを人々の記憶に刻むことになろう。被災地から比較的遠い、大阪の人々への啓蒙的な意味合いも大きいだろう。

企業の非常時対応スピードが早いということは、社内体制やガバナンスがしっかりしていることの証左である。トップマネジメントが迅速に判断を下す場があること、トップマネジメントとCSR部門など現場とのコミュニケーションパスが明確で、普段からコミュニケーションが取られていること、CSR部門、広報部門、お客さまセンター、人事部門など災害対策発表に関係する部門の横のコミュニケーションがよいことなどが必要である。

また、コミュニケーションがよくても、いざそうした状況になった際に適切な対応を発令できるマニュアルや仕組みがあることも必須だ。事業継続計画(BCP、Business Continuity Plan)といえば多くの企業が取り組んでいるはずだが、いざというときにスピードを決めるのは、形ではなく、トップが普段からCSRを意識して、その実現体制をきちんと取っているか、その部門と直接コミュニケーションをとっているかが重要と考えてよい。

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