IBMは、どうしてiPhoneを選んだのか アップル×IBMの提携で始まったこととは?

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こうした、いわゆる”アップセル”(顧客に対してよりグレードの高いものを販売すること)のノウハウは、店員のスキルに強く依存していた。もしスキルを持たない店員がHDMIケーブルを必要とする顧客に売り損なうと、売上げそのものを失うだけでなく、自宅に持ち帰ったレコーダが使いものにならず満足を得られないことにもつながる。

アップセルは、すでに多くのECサイトが実践しており、過去の購買情報をもとにビッグデータ分析で、必要と思われる製品を紹介する。そこに店員は介在せず、”人”という流動性の高い要素によってサービス品質がブレることがなくなる。

在庫確認などのスピードアップにも

さらには在庫確認などのスピードアップにも貢献し、直接的な売上げが向上する。顧客が探している場所をiBeaconで確認し、近くにある商品のリストをあらかじめタブレットやスマートフォンに表示しておけるからだ。

IBMが顧客とともに集めたデータによると、在庫確認をしている間に、手持ちのスマートフォンで同等商品の価格調査をする顧客は8割、さらにその半分は価格調査の結果、実物を確認して熟慮した結果、売り場を離れてしまうという。

Sales Assistanceでは、在庫を確認したならば、その場でレジに行かなくとも端末上でバーチャルバスケットに入れていき、買い物が終わった最後にチェックアウトをすれば、出口で梱包された商品を受け取るといったサービスも行えるという。

顧客に気持ちよく買い物をさせるためのノウハウを盛り込むために、モバイルアプリを最大限に使っているわけだ。これはたとえば、フィールドサポート用アプリExpert Techなどにもみられる。

Expert Techは通信事業社向けのサポートアプリだ。通信事業者のサポートでは、フィールドサービスが問題解決に必要な材料、あるいはサポート人員のスキルが不足し、問題解決できずにいったん帰社してから出直すことも少なくないという。

顧客にも不満を残すが、再度の出動が必要となればサポートコストは1回あたり80ドル上積みされる。すなわちサポートの質を挙げなければ、顧客からの信頼とともに経費も積み重なると言う事だ。

そこで、ビッグデータ解析により、そもそもの顧客からの報告から必要な補修部材を予想。サポートに向かう社用車に部材を補充しておき、割り当てられた訪問車両で現場に向かうよう設計されている。もちろん、現場へのルート検索や修理報告書の提出機能も統合されている。

さらに、フィールドサポート担当者が解決策を見つけられない場合、テレビ電話機能のFacetimeを通じて社内の専門家へとつなぎ、より詳細に掘り下げて問題解決を図ることもできる。

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