「特別支援と通常学級の子は違う」を取り払う、インクルーシブ教育の本質 全員特別それぞれ支援必要というマインドで

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でも私は、この結果に少し違和感を覚えました。というのも、そもそも著しい困難を示す子どもって、どんな子どもなのかと思うからです。

中曽根陽子(なかそね・ようこ)
教育ジャーナリスト/マザークエスト代表
小学館を出産で退職後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子ども達の笑顔のために」をコンセプトに数多くの書籍をプロデュース。その後、数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクト」であり、そのキーマンであるお母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)、『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)、『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方』(青春出版社)などがある
(写真:中曽根氏提供)

この調査での「学習面で著しい困難を示す」とは、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のうちの1つ、あるいは複数で著しい困難を示す場合を指し、「行動面で著しい困難を示す」とは「不注意」「多動性-衝動性」、あるいは「対人関係やこだわり等」について1つもしくは複数で問題を著しく示す場合を指すと書かれています。

質問の中身を詳しく見ていくと、例えば学習面では独特の筆順で書く、文章を書く際に漢字をあまり使わない、思いつくままに話すなど筋道の通った話をするのが難しい、内容をわかりやすく伝えることが難しい、初めて出てきた語や普段あまり使わない語などを読み間違える、個別に言われると聞き取れるが集団場面では難しいなど。

行動面では、同じ学年の児童生徒と比べて、大人びている、ませている、みんなから「○○博士」「○○教授」と思われている(例:カレンダー博士) 、他の子どもは興味を持たないようなことに興味があり「自分だけの知識世界」を持っているといった質問が並んでいます。

漢字を使って文章を書く……。もちろん書けるようになったほうがいいけれど、デジタル化が進んでいる中で、書くのが簡単でないなら、ICTを活用すれば補完できそうです。また、思いつくままに話す人は大人でもいくらでもいるし、いわんや行動面で、ほかの子と比べてとくに目立っていることが、困難を示すことに含まれているということは、それぞれの個性や特性を無視して均一化することが、教育のゴールになっているように見えます。この調査で明らかになったことは、困難な子どもの実態ではなく、教育の課題だと言ってもいいのではないでしょうか。

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