ジョブズがiPhoneで「世界シェア1%」掲げたワケ 元アップル広報が学んだ「メディアの操り方」
大風呂敷よりメディアの「期待値」を読め
「〇〇社、失速」「早くも人気に陰り」
全力で臨んだ発表の数カ月後、新聞にこんな見出しが載っていたら、広報ならできれば人目に触れる前に全国の駅売店を回って、全部の新聞を買い取ってしまいたい気分になります。今回はマスコミが抱く「期待値」のコントロールについて考えてみます。
コントロールというと「ウチの広報はメディアのコントロールができていない。何だこの記事は!」などと、いきり立つ会社幹部もいたりするでしょう。しかし、賢明なる読者の皆さんはもうおわかりだと思いますが、マスコミそのものをコントロールしようなどと、大それたことを考えるのは得策ではありません。せいぜいひんしゅくを買って、以降付き合いにくい会社だなと思われるのが関の山です。
マスコミに対する「期待値のコントロール」というのは、過度に盛った発表をしない、むしろ第一声は控えめにして、後から記者の評価を超えていくといった考え方です。広報といえば、何でもかんでも派手に発表すればいいと思いがちです。しかし、偉大なる先人は「竜頭蛇尾」のような素晴らしい四文字熟語を残して、我々のこうした「イキった(調子に乗った、偉そうな)」考え方に教訓を与えてくれています。
例えば製品どころかまだコンセプトレベル、事業的に1円もお金を生み出していない状態だったりするものを、一流ホテルを借りて派手な演出でババーンと発表したとします。こんなにイノベーティブです、今後こうやってああやって、盛大にこの事業を拡大しますのでご期待ください、と大見えを切る。するとマスコミ側には当然ながら大きな期待だけが残ります。この段階で、マスコミの期待を「経営上のリスク」として勘定に入れるべきなのですが、「まあ世間は忘れてくれるだろう。言ったもん勝ちだよ」というような甘い考えでいると、冒頭のような批判的な記事が後々出ることになります。
マスコミ側には好意も悪意もなく、記者はその後どうなったかという事実だけを書きます。しかし「社長イキってた割には、その後は中身なかったよね……」と断ぜられたときは、発表時との落差から、どうしても辛口記事にならざるを得ないでしょう。これでは、勢い任せで記者の期待値を管理できていない広報と言われても仕方ありません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら