日本人が知らない"陰謀論"による国家転覆の危険 独「クーデター計画」の背景と日本での"現実度"

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これらは「保守」を自称する集団であるが、思想的付置は一枚岩ではない。いわゆる「右寄り」の中道右派から極右まで包含しており、その中には「王政復古」を目指す人々も含まれていた。前述の「New Direction」には、明白に王政を中心とした階級社会の価値を擁護する論説が掲載されている("European Conservatives at a Crossroads")。

とはいえ、繰り返しになるが「保守」といっても内容は雑多であり、「王政復古」「キリスト教復権主義」「反移民」「反EU」「反グローバリズム」など、既存の政治勢力に対するさまざまな「右側からの不満」の寄せ集めであるとみるのが適切であろう。

こうした雑多な「保守集団」に対し、この6年ほどの間に生じたアメリカのポピュリスト右派の影響は否定できない。例えば、トランプの支持母体といわれる「CPAC(保守政治行動会議)」には、前述の「ECR」や「New Direction」など3団体すべてがオブザーバーやスポンサーなどとして参加している。また、右派政党である、イギリス独立党のナイジェル・ファラージやイタリアのジョルジャ・メローニも頻繁に参加している。

「陰謀論的世界観」がヨーロッパに持ち込まれた

そして、トランプ支持集団とQAnonは親和性が高い。典型例は、「トランプ派議員」として知られるマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出)で、かなり陰謀論めいた発言をくり返し、共和党内部でもしばしば問題視されている。同じくトランプ派として知られるポール・ゴサール連邦下院議員(アリゾナ州選出)も白人至上主義的傾向が強いことで知られる。

ここにおいて、<QAnon><アメリカのポピュリスト右派><ヨーロッパの保守勢力>との接点は求められよう。こうした経路をとって、QAnonのような陰謀論的世界観がヨーロッパに持ち込まれたと考えるのがよさそうである。

今般のクーデタ未遂事件を起こした「ライヒスビュルガー」と呼ばれる集団も、こうした雑多な保守勢力の一部であると見ることができる。共通点は、「いまのドイツの民主主義に不満を抱き否定する」ところと見るのがよく、現政府を否定したい右派ポピュリストや極右も影響しているだろう。

体系だった思想や組織というより、「その国の価値の基盤になるもの」についての不安が、現体制を右側から否定する根拠=第二帝政の復活と貴族(ハインリッヒ13世)を軸とした「復古的政体」という極端なかたちをとっていると考えられる。いわば「ネイション」のアイデンティティ・クライシスが極端な復古主義をとったといえるだろう。

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