子どもの「ウェルビーイング高める」余裕のない学校現場に必要な根本対策 教職員のウェルビーイングは大丈夫なのか?

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このような状態で「先生は、子どもたちのつらさやSOSにもっと気づけ、ちゃんとケアしろ」などと周りが言っても、限界はあるだろうし、さらに学校現場を苦しめてしまう。子どもたちのウェルビーイングを大切にしたいなら、まずは教職員のウェルビーイングを高めることが不可欠だ。

ばんそうこうを貼り続けるような教育政策

しかし、日本の教育政策をざっくりレビューするなら、教職員のウェルビーイングには冷淡な姿勢が続いている。

教職員数は大して増えないのに(むしろ少子化により減少する側面もある)、仕事は増えているし、前述のとおり、子どものケアやコロナ対策、ICT活用などもあって、仕事の難易度は上がっている。文科省や教育委員会はこの問題にまったく無策であったわけではないが、抜本的な対策を講じることはできていない。

現に「チーム学校」といった掛け声はあるものの、教員以外のスタッフは非常に少なく、協業できる機会は限られる。ある小学校では、スクールカウンセラーもICT支援員も2週に1度くらいしか来ないので、必要なときにいない、と述べていた(体制整備や支援の頻度は、自治体ごとにかなり差があるようだ)。

2022年は、7月に教員免許更新制が発展的に解消されたことが大きなニュースの1つであるが、研修履歴の義務化など仕事を増やしてしまっている。教員採用試験の倍率の低下が著しい自治体も少なくない。教職員を応援するという姿勢が行政に弱いことを学生は感じ取っているのではないか。

前述の次期教育振興基本計画の検討素案でも「子供たちのウェルビーイングを高めるためには、教師のウェルビーイングを確保することが必要であり、学校が教師のウェルビーイングを高める場となることが重要である」とは書かれているものの、具体策は乏しい。ついでに述べると、教師のことしか述べておらず、教員以外のスタッフはここでも蚊帳の外である。

むしろ、教育振興基本計画などでは、子どもたちのウェルビーイングのために、学校と教職員のやることを、相変わらず、のんきに増やし続けているようにも見える。これまでの反省をしない、文科省と一部の識者などの悪い癖ではないか。

例えるなら、大ケガをして出血多量な人がいるのに、教育行政は、ばんそうこうをあちこちに貼って、いちおう対処したふうに見せている。手術や入院(抜本的な対策や環境整備)が必要かもしれないのに。

子どもたちのウェルビーイングを保障し、高めるために、根本的に何が足りておらず、重要なのか。2022年をしっかり振り返って、来年こそは進めたい。

(注記のない写真:プラナ / PIXTA)

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
妹尾 昌俊 一般社団法人ライフ&ワーク代表理事、OCC教育テック大学院大学 教授

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せのお まさとし / Masatoshi Senoo

徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年に独立。全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱のほか、埼玉県、横浜市、高知県等)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁において、部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議の委員も務めた。Yahoo!ニュースオーサー。主な著書に『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』『先生を、死なせない。』(ともに教育開発研究所)、『教師崩壊』『教師と学校の失敗学』(ともにPHP研究所)、『学校をおもしろくする思考法』『変わる学校、変わらない学校』(ともに学事出版)など多数。5人の子育て中。

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