鉄道の終夜運転縮小、「利用減」以外にもある事情 2022~2023年の年越し、関西は復活する路線も

拡大
縮小

昨年の終夜運転の利用状況については、そもそも新型コロナウイルス感染拡大前から利用者が減少傾向にある中、2019年度と比べてもさらに多くの路線で大きく減ったという。このため、今回の年越しは比較的利用が多い都心部を中心に運転することになった。

ただ、全体的には縮小傾向ではあるものの、中央・総武線各駅停車のように利用の減少幅がほかよりやや少ない路線もあり、その部分は本数増として反映しているとのことだ。同線は、昨年は20分~50分おきだったが、今回は10分~80分おきと、時間帯によって本数を調整している。

私鉄では、京王電鉄が新宿―高尾山口、新線新宿―笹塚間で各駅停車を60分間隔で運転、座席指定の「京王ライナー迎春号」も4本運転する。京成電鉄は「シティライナー(成田山開運号)」を京成上野―京成成田間で運転。普通列車は京成上野―京成成田間、押上―京成金町間でそれぞれ上下各9本運転する。昨年に比して両区間とも1本ずつ少ない。

京王5000系 「迎光」ヘッドマーク
「迎光」のヘッドマークを付けた京王電鉄5000系(写真:IK/PIXTA)

昨年実施しなかった東武、西武、東急、小田急、京急、相鉄は今年も実施しない。ただ、東急は終電後に東横線と田園都市線で臨時列車を1本ずつ運転、小田急は早朝に臨時ロマンスカー「ニューイヤーエクスプレス」と各駅停車を運転する。

「利用減」以外の意外な理由

一方、終夜運転を完全に取りやめる鉄道も目立つ。昨年の年越しでは、銀座線の上野―浅草間のみに縮小しつつも、同区間では15分間隔と頻発運転していた東京メトロが、今年は全線で終夜運転も終電延長も一切行わないと発表した。都営地下鉄も、昨年は浅草線で終夜運転、都営三田線と都営大江戸線で終電繰り下げを行っていたが、今回の年越しでは全線で実施しない。

東京メトロに今年の終夜運転を取りやめる理由を聞くと、「コロナ禍でお客様のご利用が少ないことが予想されるため実施いたしません」との回答だった。

一方、ほかの鉄道会社からは意外な回答も返ってきた。京急電鉄は大師線沿線に川崎大師があり、参詣客でにぎわうが、前回の年越しも終夜運転はせず、今回もしない。発表では「新型コロナウイルス感染防止対策およびご利用状況を鑑みて」との理由を挙げているが、同社に問い合わせてみると「動力費の高騰のため」という理由もあるとのことだった。昨今の物価高やエネルギー価格上昇の影響がこんなところにも表れているようだ。

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