東京からもっとも近い被災地・浦安(5) 駅周辺のインフラなどが短期間で着々と復旧

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東京からもっとも近い被災地・浦安《5》復旧工事着々

続いて中町地域に入った。新町と中町の間にも古い堤防の跡がある。元町と中町の間にも堤防があるため、中町は両サイドを堤防に囲まれた町である(1)。

 


<写真1>左側が中町地域の入船。右の堤防の先が新町地域だ。

 入船の住民は「土砂の噴出量がいちばん多かった地域は入船ではないか。だから上下水、ガスとも止まっている地域が一番広いままだ」と言う。確かに、被害の程度はかなり大きく、近辺のオフィスビルをみると、大きく地盤沈下していることもわかる(2)。


<写真2>入船は道路の痛みが激しい地区だ

「がんばろう!うらやす」

入船4丁目にある市立入船保育園では建物は無事でも、水道・ガスが止まっており再開できない状態だ。

記者がその前を通り掛かったときは、ちょうど職員が市民みんなを応援するようなメッセージを正門に張っているところだった(3)。「12日がちょうど卒園式だったのに地震があったのでできなかった。卒園式のために用意したチューリップは、行きかう人が少しでも和むように、正門の横に飾っているんです。元気を出さなければ」と1人の職員が説明してくれた。


<写真3>入船保育園に「がんばろう!うらやす」のメッセージ

入船保育園のならびにあるのが大型マンションの「入船東エステート」だ。中央エステート、北エステート、西エステートとあわせると2436戸にもおよぶ、超巨大マンションである。

この入船東エステートでは目下、京葉ガスがガス管の工事を進めているところだ(4)。作業員に尋ねると、「新たにガス管を敷設するのはそれだけ元の管の被害が大きかったからだ。本来はもっと深く埋めなければならないのだが、応急措置で浅く埋めて復旧を急ぎたい」とのことだった。


<写真4>つなげたガス管はこのあと地下に埋設する

 駅前は急ピッチで補修

入船からさらに北へ進むとJR京葉線の新浦安駅がある。京葉線は現在、間引き運転をしているところだ。

駅前にはかなりの数の作業員が集まっており、道路の復旧工事を進めている。壊れたタイルを取り除きアスファルトで固める、という応急処置。美醜をうんぬん言っている場合ではないのだろう。ただ、高架にある駅へ昇るための高齢者用のエレベーターのように、まったく手付かずのものもある(6)。

 

<写真5>ひび割れ箇所をアスファルトで補修

  

<写真6>エレベーターは止まったまま


 新浦安駅の構内には今日発行の「広報うらやす号外」が置かれていた(7)。そこには災害対策本部長をかねる松崎秀樹市長のメッセージ「市民の皆様へ」が掲載されている。

松崎市長は、市民に対して2つのお願いをしている。

「災害対策本部には、市民の皆様からの要望など、さまざまな声が直接届いております。皆様の声を親身に聞いて個々に対応することは必要だと考えていますが、今は市民生活の安定と一刻も早い復旧に全力を注ぎたいと思いますので、必要最低限のことをお知らせいただきたいと思います」

「すべてのことを一度に処理するのは不可能です。対策本部では多くの市民の皆様の生活の影響を及ぼすところから順次に、そして、自衛隊を含め、近隣からの応援もいただきながら、一日も早い復旧を目指しています」

昨日(16日)は、市庁舎や災害対策本部に一部の市民が長時間にわたりクレームの電話を掛け続け、そのことが業務にも差し支える事態になった。ほとんどの市民が市の復旧方針に協力している中で一部のクレームには応じない、という強いメッセージだろう。 


<写真7>6万部以上が配られた「広報うらやす号外」

 
 2ページ立ての簡易な号外だが、2ページ目にある避難所・給水所マップはわかりやすい(8)。これをみると、これまでの記事で用いてきた「元町地域」「中町地域」「新町地域」がどこなのか、よくわかるはずだ。

<写真8 写真をクリックで拡大>

地図の左側が元町で当代島、北栄、猫実、堀江、富士見から成る。中央の弁天、東野、富岡、美浜、今川、入船が中町、右側の日の出、明海、高洲が新町だ 
 最後に寒風が吹きすさぶ新浦安の陸橋からの県道276号線を眺めた。電柱が1本傾いているだけで、ほぼ、いつもどおりの景色といえるだろう。

岩手、宮城、福島の海沿いの町は大津波が破壊的な打撃を与えた。浦安市はそれとは比較にならないほど被害の程度は小さい。あわてず、騒がず、落ち着いて復旧を見守っていく--市民にはそんな心構えが必要といえそうだ。

 


<写真10>17日午後の新浦安駅前

 

■東京からもっとも近い被災地・浦安(1)
■東京からもっとも近い被災地・浦安(2)
■東京にもっとも近い被災地・浦安(3)
■東京にもっとも近い被災地・浦安(4)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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