東京からもっとも近い被災地・浦安(4) 新しい大型マンションが断水に苦しむ

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東京からもっとも近い被災地・浦安《4》新しいマンション地区が断水に苦しむ

千葉県浦安市は面積17平方キロメートルほどの小さな街だ。しかし、被災状況が地域によってまったく異なっているのが大きな特徴だ。

浦安市の居住地域は、もとから陸地で漁師町として栄えていた「元町地域」、1968年に完了した第一期埋め立て工事で誕生した「中町地域」(弁天、東野、富岡、美浜、今川、入船)、1980年完工の第二期埋め立てで生まれた「新町地域」(日の出、明海、高洲)の3地域に分かれる。このうち、まったく液状化の被害が見られないのが元町。それに対し、中町と新町は両方とも広範に液状化が襲った。居住地域ではないが、浦安鉄鋼団地のある工場地域と東京ディズニーリゾートのある観光地域も液状化に見舞われ、水道管、下水管、ガス管などのライフラインが大きな損傷を受けた。

砂塵が舞う新町

3月17日、あらためて元町と中町の境界部分に立ってみる。何事もない平穏な元町が左側で、右側が中町だ(1)。中町側は電柱が傾いているほか、いたるところで土砂が液状化して噴出した跡がある。

<写真1>元町から中町の間を走る道路には堤防跡と段差があり、中町側が高くなっている

ただし、戸建住宅や古い団地が多い中町と、新しい高層マンションの多い新町では被害の様子はおのずと異なる。新町は日の出2丁目、高洲1・3丁目を除けば、ほぼマンションばかりの町だ(2,3)。公園をはさむようにゆったりとつくられた大型マンションと広く作られた道路に特徴のある街は、地面さえ見なければいつもと変わらない美しさを誇る。しかし、道路に目をやると真っ白。

イトーヨーカ堂や家電量販店ケーズデンキなどの入り口や駐車場も危険な状態になっている。こうした店舗は、最低限の補修で安全を確保した上で運営を継続しているような状態だ。

 

<写真2>境川を渡る橋から明海、日の出方面のマンションを望む

 


<写真3>高洲の大型マンションを望む

 

もちろん、中町にも大型マンションが立ち並んでいるが、中町は古いものが多い。下表は浦安市内の総戸数200戸以上のマンション一覧。新町は2000年以降に開けた新しい街であることがわかるだろう。

 

 

その新町では現在、道路の補修などいたるところで工事が行われているが、大企業の寮などは放置されたままになっている。土に埋まったままのオートバイは、噴き出した泥砂の多さを物語っている(4)。さらに、下水管のマンホールにいたっては70センチほど地上に飛び出している箇所があり復旧までにかなり時間がかかりそうだ(5)。

 


<写真4>日の出の某マンション。自転車やオートバイが土砂に埋まったまま
 

<写真5>日の出2丁目の歩道ではいくつかのマンホールが大きく飛び出している

 断水だけでなく計画停電も

浦安市内では102カ所で上水道の破断が見つかったため、中町、新町の多くの場所で断水が続いている。そのため、人々は砂煙が舞う中で給水所に並んで飲み水を受け取らなければならない。ヤカンを1つ持って並んでいた20代の主婦は「何日も重い水を運んで腰を痛めてしまった。お湯を沸かす分を必要なだけなので、とりあえずヤカンを1つ持ってきた」と語ってくれた(6,7)。

 


<写真6>砂塵が舞う中で給水の列の並ぶ。朝7時30分から午後9時までが給水時間だ

 


<写真7>横浜市水道局も応援に駆けつけていた

 3万7000世帯が断水していることもあり、上水の一刻も早い復旧が待たれるところだ。電気が通っていれば、なんとかなる……。そう歯を食いしばりとどまり続けている市民も多い。だが、浦安は計画停電の実施箇所として当初から候補に挙がっている。これまでは直前になって中止となっていたが、本日(17日)は行われそうだ。14時少し前に市の公式アカウントは、以下のような悲痛なツイートを流している。

「東京電力から一方的な通告があり、浦安市全域で、本日午後2時30分から3時間程度の計画停電を実施することになります。市では、東京電力に、計画停電をやめるよう強く申し入れをしましたが、全体の電力供給量が許容量を上回る恐れがあるための非常措置とのことです。」

さらに下水道の使用制限を設けられた地域では、自宅内では排水をせず、仮設トイレを利用することが求められる(8)。ただし実際には仮設トイレを用いず自宅内トイレを用いたりして排水する住民も多く、いたるところで下水の汲み取り作業が行われていた(9)。

 

<写真8>給水所には浦安市が設けた仮設トイレが設置されている 

 


<写真9>マンホールを開けてバキュームカーが汲み取り作業

今後のマンション建設に影響も

新町地域には、まだ広大な土地が残されており、分譲マンションがさらに増える予定だった(10)。しかし、今回の震災により、開発計画は大きな影響を受けることだろう。

 


<写真10>海べりにはまだ広大な空き地が残っている

その5 「復旧工事着々」に続く

■東京からもっとも近い被災地・浦安(1)
■東京からもっとも近い被災地・浦安(2)
■東京にもっとも近い被災地・浦安(3)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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