日本の進撃、AbemaTVに懸けた藤田社長に追い風 放映権獲得に巨額資金を投じたW杯中継で躍進

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サイバーエージェントの藤田晋社長(49)に追い風が吹いている。同社は赤字のインターネットテレビ「ABEMA(アベマ)」に巨額の資金を投じてサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会の放映権を獲得、日本がスペインに勝利した2日、視聴数の最高記録を更新した。

勝利を喜ぶ日本代表の吉田麻也キャプテン(左)と長友佑都選手(中央)Source: Getty Images Europe

2016年4月の開局以降、サイバーAのメディア事業は赤字を継続している。22年9月期には124億円の営業損失を計上する中、ジェフリーズ証券の佐藤博子アナリストの推計によると、同社はW杯放映権の獲得に150億円から200億円を支出。同大会の全64試合を無料中継しており、日本代表が奮闘する中、多くの視聴者を引きつけている。

アベマのデーリーアクティブユーザー数は初戦のドイツ戦で1000万、コスタリカ戦では1400万を超え、スペイン戦ではさらにそれを上回る見通しだ。2日の株価終値は前日比4%増の1288円と続伸。23日にあった初戦のドイツ戦直前との比較では株価は6.4%上昇、時価総額では400億円近く増えた。

藤田社長には「風を取り込むセンスがある」と、ジェフリーズ証券の佐藤氏は言う。1次リーグで日本が強豪国とされるドイツやスペインと同じ組に入った時、誰が見ても負けると思われた中で突破した状況は、当初の期待以上に大ヒットしたスマートフォン用ゲーム「ウマ娘プリティーダービー」が大ヒットした時と似ており、「女神の風が吹いた」と述べた。

日本がスペイン戦で2-1で勝利した後の午前6時、藤田社長はツイッターを更新した。同社長に業績への影響などについてコメントを求めたが、現時点で得られていない。

サイバーAの宮川園子IR室長は、「メディアとしての格を上げていく、また大量アクセスに耐え得る動画配信の技術力向上のため放映権を取得したが、社内で想定した以上のパフォーマンスだった」と振り返った。

業績については、放映権料や関連番組の制作費、広告宣伝費で、10-12月期(第1四半期)にメディア事業で損失を計上する見通しだと述べた。 

シティグループ証券の山村淳子アナリストは21日付のリポートで、サイバーAの23年9月期以降の営業利益予想を前年同期比15%減となる589億円に下方修正した。W杯関連費用を積み増し、アベマ事業コンテンツ費用が増加し続けると見込んだ。

岩井コスモ証券の川崎朝映アナリストは、「サッカーが終わったらおしまいとなる可能性はある」と指摘。利用者が増えれば収益拡大が見込めるが、「つなぎとめるにはコンテンツを充実させる必要があり、それには費用がかかるので悩ましい。どううまくバランスを取りながら収益を改善させるかだ」と述べた。

--取材協力:、.

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著者:日向貴彦

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