「認知症の兆候」を手軽に把握するサービスの数々 電話、Web検査など早期発見できるツールが登場
「脳磁計」を活用した検査でも早期にリスクを測れる。脳磁計とは、脳が活動するときに生じる磁場の変化を読み取り、状態を可視化する検査機器。検査は5分程度で済み、MRI(磁気共鳴断層撮影)と比べても検査音が静かだ。通常の認知症診断はMRIを使用するが、脳の萎縮が進んだ状態でないと異常を見つけにくい。一方、脳磁計は脳の働きが鈍っていないかを確認するので、萎縮が進んでいない発症前段階から検査できる。
埼玉県熊谷市の熊谷総合病院では、脳磁計を使った「脳機能ドック」と各種検査を組み合わせてリスクを測定する。検査結果を基に、個々人に合った予防についてアドバイスが受けられる。
同病院の鴫原(しぎはら)良仁医師は「代表的なもの忘れ症状が目立たない人も、認知症発症の危険性があることがわかっている。もの忘れはないが、認知機能が低下していないか心配という状態の人でもリスクを評価することができる」と語る。また、認知症の検査というと拒絶する高齢者も多いが、「脳機能ドック」であれば健康診断の一環として受診してくれる例もあるという。
認知機能は5〜10年かけて緩やかに低下する。小まめな検査で認知機能が低下してきていないか把握することも重要だ。手軽かつ定期的に認知機能を検査できるのが、東京大学などの研究グループが立ち上げた「J-TRC(ジェイ・トラック)」だ。
Web上で定期検査
Web上で参加登録し、生活状況の調査や20分程度の記憶テストを受けると、今の認知機能の状態を確認できる。認知症の診断を受けていない50〜85歳が対象だ。さらに3カ月に1度、検査を勧めるメールが届き、忘れずに検査を続けやすい。
「J-TRC」は認知症の治療薬・予防薬開発のための治験者募集プロジェクトとして発足。定期的な検査の結果、リスクの上昇が疑われる場合、希望に応じて研究機関での検査や治験に参加できることもある。プロジェクトの代表を務める岩坪威・東京大学教授は、「認知症発症前の段階で異常を見つけることが予防において重要。参加者が増えれば、治療薬の開発につながる可能性も高まる。多くの人に参加してほしい」と訴える。
まずはこうした検査やサービスで認知機能の状態を把握することが予防の第一歩。負担の少ないものを選んで、うまく予防と向き合うことが重要だ。
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