メーカーが虎視眈々、「機能性表示食品」とは? 国が認める機能性表示で3つ目の制度が開始

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では、メーカーの反応はどうか。健康食品大手ファンケルは「これまで科学的根拠があっても暗示するしかなかったが、今後はお客様にわかりやすい表示ができる。スタートダッシュに乗り遅れないよう、可能なかぎり多くの商品を出したい」と話す。味の素も、「自社で有する研究データをガイドラインに照らし合わせ、何が表示できるのかを精査している。マーケットが変わるチャンスに乗る必要がある」と意欲的だ。

中小企業も制度の活用に前向きだ。大麦・雑穀市場で業界首位のはくばくは、「科学的根拠を臨床試験で示すのは費用面で難しいが、研究レビューであれば大麦に関する文献は世界中にある。機能性を表示し店頭で手に取る動機づけができる」と期待を寄せる。

生鮮食品の生産者も例外ではない。JAみっかびは温州みかんでの届出を目指す。「12年間の研究成果を表現できる場がなかった。ほかと比較したときに機能性表示で選んでもらえるようになれば」(後藤善一理事長)と言う。

メーカーの反応に温度差

もっとも、企業の期待には温度差もあり、機能性表示食品がどこまで市場に浸透するのかは未知数だ。

「成分によっては、すでに効果効能が広く認知されているものもある。そうした場合、コストをかけて機能性表示食品を発売するインセンティブの働かない可能性がある」(食品大手担当者)といった見方もある。健康食品市場で首位のサントリーは、「届け出るかを商品ごとに検討中。機能性表示でも商品の価値がお客様に伝わらないと判断すれば、届出は行わない」という。

新制度を利用した機能性表示食品が市場に出回るのは早くて6月から。これで国が認めている3制度の食品と、それ以外の健康食品が店頭に共存する。「相変わらずイメージで売ろうとする業者は、実は科学的根拠がないか、コストをかけたくないかのどちらか。違反表示に関しては人員を強化して取り締まる」(消費者庁食品表示企画課)と言うものの、消費者にとって公認・非公認の表示が乱立する複雑な状況は続きそうだ。

国立健康・栄養研究所の梅垣敬三情報センター長は、「食品で(病気が)治るとは思ってはいけない。効果が明確に出るようなものは逆に危ない。正しく理解したうえで摂取すべき。そうしなければ、健康食品市場が拡大したとしても、国民の健康にはつながらない」と警鐘を鳴らす。同センターは「『健康食品』の安全性・有効性情報」というホームページを設け、基礎的な解説や素材情報のデータベースなどを公開している。

第3の表示制度は、市場拡大と消費者の健康に資するものになるのか。4月の“解禁”が近づいている。

「週刊東洋経済」2015年3月21日号<16日発売>「核心リポート01」を転載)

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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