「親の最期」を業者に丸投げする人が急増する背景 「終活」相談者の9割は本人でなく息子や娘

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これまで火葬場にも家族が来なかったということが、3回ある。火葬をしてお骨を拾うのはスタッフだ。そうした現場が最も荷が重いという。

「お子さんへは事前に何度も連絡は入れているが、危篤の際にもご遺体への最後のあいさつにも来ない。火葬直前にもう一度メールを送るが、火葬場で『これでお別れです』と言われると、本当に大丈夫かなと一瞬躊躇します」(同)

身元引き受けも含めると、初期の登録料は44万円。電話やメール以外の代行業務は時間ごとに料金が発生する。相談は1日30件ほどあり、この2年で売り上げは倍増した。

こうした家族代行や日常生活のサポート業務に需要があるのは、ほかの制度では担えない“隙間”の支援だからだ。

父母のことで電話が来ると眠れなくなる

判断力の低下した人が受ける成年後見は財産管理が中心で、生活のサポートまでは行わない。行政の福祉サービスも、家族が申請や手続きを行わない限りは利用できない。「家族や親族がいる限りは家族に任せる」が原則だ。

「信じられないかもしれませんが、親のことで役所や介護施設から手紙や電話が来るだけで手が震える、眠れなくなる、怖くて封書が開けられないという方がいるんです」。こうした子どもへのサポートのほうが高齢者本人からの依頼より労を要するという。

子どもが親の面倒を見るのは当たり前、という時代は変わりつつある。親の「最期」まで業者に委託する家族代行の需要はさらに高まるかもしれない。

井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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