金利上げられない日本を待つ5つの最悪シナリオ 円安続き、企業と個人ともに悪影響及びかねない

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シナリオ④ 企業倒産、自己破産が蔓延する社会に

日銀が、このまま金融緩和を継続した場合、しばらくの間は日本経済も超円安や景気後退に耐えられるかもしれない。しかし、いずれは限界がやってくる。ギリギリまで引き延ばした後の急激な金利高は、日本社会に相当な混乱をもたらすはずだ。企業倒産や自己破産が蔓延するかもしれない。

年金生活者の生活も、一変する可能性がある。最近になって、年金を運用している「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」の運用成績が下がっていることが注目を集めたが、日本の金融緩和が続いた場合、半分は円ベースで運用しているためインフレに対応しきれるのか不安になる。

シナリオ⑤ 円キャリートレード巻き戻しによる超円高への逆流

可能性としては低いのだが、円キャリートレードの巻き戻しが起きるかもしれない。1998年に起きた1ドル=147円台までの円安相場は、その後に円キャリートレードの巻き戻しなどによって、わずか3か月後には110円前後まで円高が進んだことがあった。当時は1997年にアジア通貨危機が起こり、1998年にはルーブル・ショックが起きている。国内でも、北海道拓殖銀行や山一証券、日本長期信用銀行が破綻していた時期だ。

ただ、現在と決定的に異なるのは、アメリカが今回はインフレと戦っており、ドル安にしにくい状況があることだ。可能性は低いが、金利の低い通貨(円)を借りて外国の債券や株式、不動産などに投資する円キャリートレードがひそかに進行しているかもしれない。

円安は長期的には日本衰退のシグナルか?

IMF(国際通貨基金)が試算した2023年の世界の経済成長率によると、日本は1.6%(先進国平均は1.1%)になった。金利を上げない日本の成長率がG7のなかでもトップとなり、少なくとも短期的には、激しいインフレや急激な株安に見舞われていない中では、日本経済が健全に見える。

しかし、かつてイギリスの中央銀行であるイングランド銀行がヘッジファンドに負けた「ポンド危機」や韓国がIMFの支援を受けた「アジア通貨危機」、そしてロシアのルーブルが暴落して世界最先端のヘッジファンドが経営破綻するなど、国や中央銀行がコントロールできなくなる危機に直面するケースは数多い。マーケットが中央銀行に牙をむいた時、時として中央銀行が負けることがあることを歴史は証明している。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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