金利上げられない日本を待つ5つの最悪シナリオ 円安続き、企業と個人ともに悪影響及びかねない

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政府は物価対策費として29兆円の税金を「総合経済対策費」として補正予算を組むことを打ち出しているが、将来の借金となる財政支出を湯水のように使っている感がある。高騰する電気やガス代などへのインフレ対策を計画しているわけだが、29兆円の借金をするなら金利を上げて、円安を食い止めるほうが先だと思う人も多いはずだ。

<金利を引き上げずにこのまま放置した場合>

このまま日本銀行や岸田政権が、国債の発行残高や日銀のバランスシートの拡大に頓着せず、現在の金利を維持した場合、日本はどうなるのか……。1000兆円を超える財政赤字をチャラにする方法のひとつとして、凄まじいインフレを意図的に起こして、実質的に貨幣価値を転換させてしまう方法がある。想定を超えるインフレを政府や日銀が意図しているかどうかはわからないが、現時点で想定できる範囲でピックアップしてみよう。

シナリオ① 日本経済の信用が失墜し、円、債券、株式の日本売りが始まる

日本だけが金融緩和を続けていた場合、当然ながらヘッジファンドなどの機関投資家や個人投資家は、円を売り、日本国債や日本の株式にも売りを仕掛けてくる可能性がある。岸田政権が「財政規律に取り組む」というアナウンスを怠れば、イギリスのようにマーケットに牙をむかれる可能性がある。 このまま日銀がイールド・カーブ・コントロールで金利を抑え込もうとすると、いずれ限界がくることを投資家は見抜いている。さまざまな形で「日本売り」を仕掛けてくるはずだ。

「トリプル安」となる日本売りを仕掛けてくる?

もっとも、日銀が債務超過に陥り、日本政府がデフォルトを起こすといった事態は、外貨準備や経常収支の状況からゼロではないが可能性はかなり低い。

ただし、金融市場が発達している現在では、イギリスのケースなどをインプットされたAI(人工知能)によって売買が行われている。AIを駆使する投資家が日本円、日本国債、そして日本株がそろって大暴落する「トリプル安」になる日本売りを仕掛けてくる可能性はある。

その場合は、円はさらに下落し、日本国債の売り浴びせで金利が急騰。日銀が日本政府の発行する国債の大半を買い入れる羽目に陥るかもしれない。

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