金利上げられない日本を待つ5つの最悪シナリオ 円安続き、企業と個人ともに悪影響及びかねない

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シナリオ② 1ドル=200円を超す超円安で輸入インフレに

シナリオ①ほど過激でなくても、日本円は今後も着実に売られ、円安が進むという見方が強まっている。日本政府は断続的に国内外の市場で為替介入に踏み切っているが、その効果は一時的と見られている。実際に、介入を認めた1回目は145円台で介入したものの、結局151円台まで円安が戻ってしまい、現在は覆面介入を続けている。円安時の介入の場合、政府が保有している外貨を売却して円高にするわけだが、財務省の発表によると9月の1回目の為替介入時には2兆8382億円分の外貨が使われた。

日本の外資準備自体は1兆2380億ドル、179兆円(財務省、2022年9月末現在)あるのだが、そのうち為替介入に使いやすい「預金」は1361億ドル、19兆7300億円。1回あたり、3兆円の資金を使うとすれば6~7回程度しか為替介入できない。外貨準備の大半を占める「外為特会(外国為替資金特別会計)」のアメリカ国債を売却すればいい、といった報道もあるが、世界の債券市場への影響を考えれば現実的ではない。

そもそも為替介入は、実施すればするほど次の介入を求めて、市場は意図的に円安に進めようとする。皮肉なことだが、政府が介入すればするほど円安が進むわけだ。1ドル=200円超もあながち不自然ではない。

輸出産業は潤う?

円安なら輸出産業は潤う、と思われがちだが、日本企業の多くは工場を海外に移してしまったために、日本で販売される日本製品の価格は2倍以上に跳ね上がる可能性も出てくる。日本での売り上げに依存している家電メーカーや自動車産業などは、円安メリットを十分に生かせない。そして、何よりも日本の物価上昇は深刻さを増すだろう。自民党政権では、インフレ対策費として国民に税金をばらまくから、ますます国の借金は増えていく。

シナリオ③ インフレで景気が大きく落ち込む

超円安によって輸入インフレが起こるため、人々の生活は苦しくなる。日銀が指摘するように、日本はまだ供給に比べて需要が不足しており、その額は15兆円(需給ギャップ、内閣府、2022年4~6月期)になる。円安によるインフレが進めば需要がさらに減少し、日本は不況に陥ることになる。

そもそも現在のインフレは、円安によるものだけではなく気候変動や食料不足、エネルギー危機など「グリーン革命」の進行によって加速されている部分がある。社会構造の転換がもたらしている部分があり、短期的に解決されるものでもない。つまり、日本のインフレはこれからもずっと継続していく種類のものだ。

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