入管体制の闇、「処分可能な存在」を生きる外国人 『入管問題とは何か』著者の鈴木江理子氏に聞く

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街中にて、国士舘大学文学部教授の鈴木江理子氏
鈴木江理子(すずき・えりこ)/国士舘大学文学部教授。1965年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)共同代表理事、認定NPO法人 多文化共生センター東京理事等を兼任。著書に『日本で働く非正規滞在者—彼らは「好ましくない外国人労働者」なのか?』ほか多数。(撮影:尾形文繁)
地方の農漁業、街中の工事現場や料理店で働く外国人の姿は今や日常風景だ。政府の「外国人材の受入れ・共生」も、より開かれた日本を期待させる。だがその陰で、在留資格の有無を問わず、外国人は“処分可能な存在”として退去強制と背中合わせの日々を強いられているという。11人の著者が多様な立場から問題を提起。代表して共編著者に話を聞いた。
入管問題とは何か――終わらない〈密室の人権侵害〉
『入管問題とは何か――終わらない〈密室の人権侵害〉』(鈴木江理子、児玉晃一 編著/明石書店/2640円/297ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──入管収容施設内で昨年発生したスリランカ人女性死亡事件。医療放置の実態が明かされましたが、その後変化はありますか?

通知などの文書で改善策が示されていますが、十分な効果は見られません。いまだ適切な医療が提供されていない。サッカーでケガをして外部での治療を求めたものの認められず、寝たきりになった状態で収容されている人もいます。

一時的に収容を解く「仮放免」制度がありますが、寝たきりになってしまうと、高額な医療費の自己負担に加え、支援者によるサポート体制など難しい点が多い。過去に、病気が悪化し仮放免となった女性がいた。ホームレスとなり路上にいたところを保護され、その後亡くなった。不調を訴えたより早い段階で適切な治療を受けることができていたら、と思います。

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