「レストランの水問題」なぜ何度も話題になるのか 無料の水はマナー違反?意見分かれる2つの視点

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別の例では、水道水の代わりに湧き水を提供するケース。これは名水で知られる場所が近い地域に限られるが、シェフが料理に使うために湧き水をくみに行き、それを飲み水としても提供する店がある。

そのことは、料理全体の世界観、ストーリー作りとしても効果的に作用している。このような店は、水が無料でも、その料理の世界観に沿わせて近隣の果実で作った自家製ドリンクなどを用意していることが多い。

レストラン関係者「別に何も思わない」

飲食店の内部で実際にサービスする人たちは、無料の水を注文されたときにどのように感じるものなのだろうか。都内高級フランス料理店でサービスを担当する男性(30代)は「別に何も思いません」と答え、次のように続ける。

「うちではタップウォーター(無料の水)を用意していますし、ミネラルウォーターを注ぎ終わったら、タイミングによっては誰にでもタップウォーターを出します。ミネラルウォーターにお金がかかることを知っている人は『無料のお水ください』とおっしゃるので素直に出します。

単に『お水ください』とおっしゃる人には『ミネラルウォーターをお持ちします』と答えます。注文の曖昧な部分を短い言葉で同意をとってはっきりさせて、お客さんの求めるニュアンスは読み外さないようにする、そのような言葉選びも、サービス担当者の腕の見せ所ではないかと考えています。

タップウォーターしか注文されないからどうとかは思いませんけど、ディナーで来店して安いほうのコースでタップウォーターだけだと、多少思うところはありますね。常連さんでもタップウォーターだけの人がいらっしゃいますけど、回数多くいらっしゃいますので。無料の水だけの人をどうとらえるかは、お客さんとお店の関係性にもよります」

同じ「無料の水を出す」という行為でも、同じ店の中でもゲストの注文内容や関係性によって正解は1つではない。

水を無料で提供するかどうかは店次第で、ゲストにも店を選択する自由がある。おたがいの事情を理解すれば、飲食店でのひとときをうれいなく楽しめるはずだ。

星野 うずら レストランジャーナリスト

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ほしの うずら / Uzura Hoshino

出版社勤務のかたわら、アジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。個人サイト「モダスパ+plus」やTwitter(@caille2006)で、「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などガイドブックの解説記事やレストラン評を執筆。飲食専門のポータルサイトでシェフインタビュー連載中(飲食店.com)。Instagram(@photo_cuisinier)では、飲食に携わる人のポートレートを撮影している。
 

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