しかし、このGDPは一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額で、人口の多さに影響されます。「日本は小さな島国だから人口は少ない」と思っている人もいるかもしれませんが、実は世界38の先進諸国で構成されるOECD(経済協力開発機構)の中で、アメリカに次いで2番目に多い人口を擁しています。
そこで、国の豊かさを比較する目安として用いられるのが、GDPを人口で割った「一人当たりGDP」です。国民一人当たりの平均的な経済力・生活水準を示すものとされており、2021年のランキングで日本は世界28位となっています。2000年には世界2位まで上昇していたことを考えると大きく後退していると言えます。
その要因として挙げられるのが、産業改革の遅れ、国内購買力の低下、労働賃金の低さの3つです。
まず、産業改革の遅れについてですが、例えばかつて日本が世界をリードしていた携帯電話などの通信機器の分野では中国や台湾にその座を奪われ、もはや日本がシェアを奪還するのは難しい状態になっています。それに付随して半導体製造の分野でも、台湾や韓国が大きくリードしています。
一方自動車産業はまだ上位をキープしているものの、電気自動車への転換が急速に進む中で、その座も危うい状況です。
さらに、原油価格の高騰でクローズアップされることとなった再生可能エネルギーの開発においても、欧米や中国から大幅な遅れをとっており、「もはや日本は先進国と言えないのでは」という意見も目にするようになりました。
購買力の低下がデフレを生む負のループ
国別の経済状況をより詳細に把握する指標の1つとして「一人当たり購買力平価GDP」があります。これは各国で異なる物価水準の差を修正して、より実質的なGDPの比較が可能になるというもの。
IMF(国際通貨基金)が公表した2021年の国別ランキングを見ると、日本は36位。アメリカは9位、ドイツは20位など、他の先進国と比較すると日本は下位にある一方で、名目GDPでは日本を上回る中国は74位。単純なGDPの比較からはわからなかった順位が見えてきます。
バブル崩壊後の1990年以降、日本では「価格破壊」という言葉が浸透するなど、経済成長が低迷していきました。「失われた30年」とも呼ばれる1990年~2020年の物価上昇率を見ても日本の物価はほぼ横ばいとなっています。
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