"産後うつ"へのケア、今から何が必要なのか 産後の日(3月5日)、この機に考えるべきこと

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世田谷区が産後ケアに取り組んだきっかけは、厚生労働省の社会保障審議会児童部会が2006年3月に作成した「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」第2次報告だ。

同報告では、2004年に虐待で死亡した子どもの数は58人で、そのうち0歳児は約4割の24人。月齢を見ると、4カ月未満の赤ちゃんがそのうちの7割を占めていた。また加害者は、実母が53.4%と最も多かった。さらに区民から、0歳から2歳児までのケアが必要との要望が寄せられたことも、産後ケア対策推進のきっかけになったという。

そもそも世田谷区は高齢出産が多く、親などから産後のサポートを受ける人が少ないという事情がある。

同区の子ども家庭課によれば、2013年度に区内での出生数は7731人だが、そのうち35歳以上の母親からの出生数は3299人。実に42.7%という高率だ。さらに母親の65%には、サポートしてくれる同居人も近所の頼れる人もいないというデータもある。実際に同センターを利用する母親の平均年齢は35歳で、まさに実態をあらわしているといえる。

国は2015年度から年151億円の予算

こうした事情を背景に、国も対策に乗り出した。2014年度には「妊娠・出産包括支援モデル事業」を実施し、8億円の予算を付けた。さらに2015年度からは恒久事業化し、「地域における切れ目ない妊娠・出産支援の強化」として151億円を計上する予定だ。

これにいち早く取り組んできたのが、公明党だ。同党女性委員会は2014年5月14日に「女性の元気応援プラン」を発表し、産後ケアを法律上明確にして、制度整備を進めていくことを求めている。

その中心となった同委員会委員長の古屋範子衆院議員は、産後ケアの重要性について以下のように
べている。

「産後うつは産後2~3週間から6カ月までに発生しますが、一般的な鬱と比べ不安や焦燥感が強い一方で、なかなか周囲が気づきにくいという面があります。妊婦のマタニティブルーとはまた異なり、世話をしなければならない赤ちゃんを抱えるため、もっと深刻な問題ともいえます。何よりも問題は、どこに相談していいのかが本人にはわからないという点ですね。産後だから産婦人科かといえば、そうでもない。子どもに関することだから小児科かといえば、そうでもない。そのうちどんどん悪化しかねない。その前に、保健師やカウンセラーなどの周囲が多面的にサポートしていき、産後うつを防止する体制を組む必要があります」

古屋氏は10月3日の衆院予算委員会で「児童虐待を防ぎ、妊産婦を孤立させないために、産後ケアが必要だ」と訴え、塩崎恭久厚生労働大臣から「取り組みを強化したい」との前向きの答弁を引き出した。

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