不正請求の全容解明という必要不可欠な調査すらせずに、抜け駆けするかのような格好で7月25日から、ビッグモーターへの事故車(入庫)紹介の再開に早々に踏み切ったからだ(その後、9月の追加調査に伴い、事故車紹介は再び停止)。
白川氏にしてみれば、トップ同士の”合意”をいとも簡単に反故にすれば、自らの信用に傷がつくことはわかっていたはずだ。にもかかわらず、なぜ早期の取引再開という拙速な判断をしたのか。
損保ジャパンのある幹部は、「ビッグモーターを担当する営業部門からの報告が、白川さんの判断を仰ぐものではなく、再発防止策をつくらせたので取引を再開することにしたと一方的に告げるものだった」と話す。ビッグモーターとの取引再開について、白川氏がゴーサインを出したわけでは決してなかったと言いたいわけだ。
看過できるような問題ではない
一方で、本来なら報告を受けた白川氏が「取引再開は拙速ではないか」と突っ込みを入れ、営業部門の方針を転換させるべきだったはずだ。しかし、そうはならなかった。そこには、今年4月、37人のごぼう抜きで大手金融機関では最年少の社長になったことへの悲哀も透けて見える。
52歳の白川氏に仕える役員のほとんどが年上の部下という状況で、社長就任から数カ月で「ちゃぶ台を返す(取引再開を見合わせる)ことに、ためらいがあったのではないか」と大手損保の役員は推し量る。
だが、今回の不正請求問題は年上部下への遠慮によって、保険会社が看過してよいようなレベルの事案ではない。「最悪の場合、刑事事件化する悪質な事案」(金融庁幹部)であり、損保ジャパンとしてのコンプライアンス(法令順守)体制が厳しく問われることになる重い問題だ。
9月27日、東京千代田区の日本武道館で催された安倍晋三元首相の国葬。4000人超が参列し、銀行や生命保険会社など金融機関のトップの多くが会場で弔意を示した。そうした中、同業他社の役員と顔を合わせることに「後ろめたさでもあるのか」(大手損保役員)、招待状を受けていた白川氏の姿は最後まで見られなかった。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら