3年前倒し「全小中でプログラミング授業」、加賀市が「教育内容」にこだわる訳 宮元陸市長「新教育長と幼児教育から変える」
「教育に予算を投じてこなかったことが今の停滞につながった」
――2014年の「加賀市人口減少対策アクションプラン」策定から5年で教育予算を約2倍以上に増やしたそうですが、教育予算についてはどのようなお考えを持っていますか。
教育は、必要な将来への投資です。教育に予算を投じてこなかったことが、日本の今の停滞につながっているように思います。政治家も教育に力を入れても票に結び付かないので、あまり熱心ではなかったのです。
しかし、教育という目に見えない価値がいかに重要か、そこに早く気づくべきです。すでに国力はどんどん衰退しているじゃないですか。国会でもそういうことが議論にならず、正直言って意味がわからないのですが、批判ばかりしていても仕方ない。とにかく自分のところで「まず隗(かい)より始めよ」という気持ちで、何よりも優先して子育ての領域に取り組んでいます。
とくに子育ての負担軽減だけでなく、同時に「教育内容の充実」を図ることが重要だと考えており、幼児、初等、中等教育の内容を一刻も早く変えたいと強く思っています。これまでの型にはめるような画一的な教育を脱し、いわゆる21世紀型教育に転換しないとダメ。世界には、モンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア教育など、幼児教育から優れた事例がたくさんあります。今後はそういった先進的な教育を踏まえ、子どもたちの自主性や判断力、創造性が養われていくような教育を重点施策に位置づけたい。
10月から教育長になっていただく島谷千春さんと連携し、幼児教育を含めた最先端モデルを加賀市から発信できたらと思っています。島谷さんは、文部科学省の初等中等教育幼児教育課などを経てきた方で、非常に期待しています。
一方、教育の転換に当たっては、学校に限らず、地域や行政も含めた根本的なマインドセットが必要です。今すぐ総力を挙げて発想を変えていかなければ、地方だけではなく日本の将来はないでしょう。
――デジタル庁の「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業」にも取り組まれています。
これはマイナポータルから行政が保有する情報を分析・連携して、子どもたちや家庭に対して必要な支援を行っていくものです。今、いじめや不登校、虐待、貧困、ヤングケアラーなどの問題がありますが、こうした子どもたちを客観的なデータに基づきいち早く見つけてきめ細かくケアをしていこうということ。個人情報の取得についてご理解いただくなどの課題もありますが、骨組みを整え、実証に動き出す予定です。
――今年3月には、「デジタル田園健康特区」にも選定されました。
私たちは「医療版情報銀行」を目指しています。健康寿命をいかに延ばしていくかが基本的なテーマで、病気の予防・未病を推進していくために、健康・医療データを収集し、適切な処置を講じていきます。今は、関係当局と内容を詰めている段階ですが、各自治体でも使えるような汎用性のある標準モデルを構築していきたいと考えています。
――今後、加賀市をどのような街にしていきたいですか。
私たちの合言葉は「消滅可能性都市から挑戦可能性都市へ」。人口減少に歯止めをかけて、子どもたちの夢が実現できるような、みんながワクワクするような街にしたい。そのためにも、全力で改革に取り組んでいきたいと思っています。
(文:國貞文隆、写真:加賀市提供)
東洋経済education × ICT編集部
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