3年前倒し「全小中でプログラミング授業」、加賀市が「教育内容」にこだわる訳 宮元陸市長「新教育長と幼児教育から変える」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

AIやロボットを「使いこなす人材」の育成が必要

――2020年末にはスマートシティ課の陣容を2倍にされましたが、デジタル人材の育成はどう進めていますか。

世界的に見ても、シンガポールなどのスマートネーションといわれる国では、国家公務員にデジタル人材を高い水準で確保しています。私たちもデジタル人材を内製化し、彼らが主導していくような体制をつくっていきたい。いつまでも外部のベンダーのみに頼っていては、自分たちで判断できないままに振り回されることになってしまう。スマートシティの実現にはデジタル人材の内製化は必須です。

そのため外部人材の活用も進めており、民間企業出身の方々をCDO(Chief Digital Officer)をはじめ、デジタル人材として積極的に採用しています。今後も副業を含め、外部から人材を取り入れたいと考えています。

さらに、市内に大学がないという地域的な弱点をカバーしてリスキリングを可能にするため、今年1月には地元企業と「デジタルカレッジKAGA」を立ち上げました。デジタル人材の育成や起業家教育に取り組み、地場産業の底上げをする環境を整えていきます。

――15年から市内で毎年「ロボレーブ国際大会(※)」を開催、17年度からは市内の全小中学校でプログラミング教育を開始するなど、若年層に向けたICT教育にも注力されています。

※ 自ら組み立てプログラミングをしたロボットを使って競う競技。毎年20カ国以上で開催

将来的に人間の仕事の約50%がAIやロボットに置き換わるという話がありますが、AIやロボットに“使われる”のではなく“使いこなす”人材を育成しなければ、地域は立ち行かなくなるという危機感があります。

日本では30年にIT人材が約80万人不足するといわれていますし、やはり子どもの頃から最低限の知識や技術を身に付けさせて、将来的により高度なテクノロジーを使いこなしていけるような人材をつくっていかなければならない。子どもたちにとっても、ロボットやプログラミングの教育で得たスキルは将来、生きていくためのすべになるでしょう。そのために自治体として力を入れています。

加賀市は2015年以降、毎年ロボレーブ国際大会を開催(左上・右上)。市内公立校でのプログラミング授業(左下・右下)

ロボレーブは、米国で01年から続く、ロボットプログラミングを使った教育プログラムです。つまり、米国はだいぶ早い段階から将来を見越して手を打ってきたわけで、日本はまだまだ遅れている。だから私たちは、このロボレーブの大会の開催をヒントに、教員研修をいち早く行い、20年のプログラミング教育必修化を3年前倒す形でスタートさせたのです。

――地域ICTクラブやラズベリーパイ教室の開催など授業外でも子どもたちのICT支援を行っています。19年には日本初のコンピュータクラブハウスの取り組みとして「コンピュータクラブハウス加賀」も設立されました。

コンピュータクラブハウスは経済格差や地域格差によって、ICT教育に差が生じないように子どもたちの誰もがテクノロジーに触れられる学校や家庭以外の第三の場として生まれたもので、1993年に米ボストンでマサチューセッツ工科大学(MIT)の関係者らが協力して設立し、現在は世界21カ国100カ所以上に設置されています。これを私たちは公教育を補完する意味合いで導入することにしました。子どもたちは、公立図書館のように気軽に利用してくれています。

コンピュータクラブハウス加賀

――教育現場で何らかの変化は出ていますか。

ロボットやプログラミングの分野に精通する子や能力を発揮する子が少しずつ出てきています。ロボレーブの国際大会は2015年以降、国内外から400人を超える参加者が集まり、市内の小・中学校や高校からも多数のチームが参加していますが、毎年のように上位入賞して世界大会に出場するチームがあります。初期のロボレーブ大会に出場した子どもたちは高校生くらいになり、高齢者を見守るIoTのシステムを独自に生み出したりするような生徒もいます。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事