リニア期成同盟会にけんか売った静岡知事の詭弁 JR東海社長の静岡県庁訪問は成果得られず

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もともと反対運動で土地取得が難航していることは知られており、実際は当初から川勝知事の視察ポイントに加えていたと見られる。

視察の翌日、8日に開かれた定例会見で川勝知事は「たとえ来年工事開始をしても11年を要するから、関東車両基地の竣工は2030年代前半。それぞれの現場でスピード感を持って取り組まなければならないが、神奈川県の現状は危機的。全体のスケジュールに大きな影響を及ぼしている」などと説明した。

また、「2027年開業が静岡県の工事拒否によってできないとJR東海が広報しているが、神奈川県の現状を見れば、静岡県がリニア開業を遅らせているというのはJR東海が作った風評だ」などと怒りをぶちまけた。

さらに「2027年の開業をお題目のように唱えても、題目は実現しない。題目は題目でしかない」と2027年開業を目指す「期成同盟会」まで批判した。

川勝知事は8月9日の「期成同盟会」総会で「2027年品川―名古屋間の開業、2037年大阪までの延伸開業を目指す同盟会の立場を共有する」「リニア整備の促進を目指してスピード感を持って課題の解決に取り組む」と表明した。

ところが、関東車両基地の視察で、川勝知事は「2027年品川―名古屋間の開業を目指す」立場を「現実的でない」とあっさりと反故にしてしまい、さらに、神奈川―山梨間の「部分開業」という独自の目標を明らかにした。

部分開業論は川勝流の詭弁

川勝知事は会見で「『部分開業』と言ったのはJR東海である。2027年に品川―名古屋間の暫定開業を行い、2045年までに大阪に延伸する計画だった。暫定開業とは部分開業なんです」、「部分開業はJR東海の主張である。名古屋と東京が2段階の第1段階、私はこの考え方をある意味で応用している」など川勝流の“詭弁”を弄して説明した。

金子社長との面談でも「リニア実験線を延伸して間断なく営業線につなげるとJR東海が説明している。できるところからやったほうがいい」と述べるなど、「部分開業」を今後も唱える構えだ。

山梨県の「実験線」を延伸して神奈川県と甲府を結んでも、多くの利用者は見込めない。採算面からJR東海が納得しないことははっきりとしている。

川勝知事は「関東車両基地の土地取得難航で部分開業さえできない」と主張を切り替え、2027年の開業遅延を静岡工区の未着工ではなく、他県の問題へ責任転嫁したいようだ。

さらに「神奈川工区以外も用地取得の進捗などを調べ、検証すべき」とも述べた。このままでは、他県の用地取得が難航する状況などを確認して、「期成同盟会」に新たな報告書を送付しかねない。

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