リニア期成同盟会にけんか売った静岡知事の詭弁 JR東海社長の静岡県庁訪問は成果得られず

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川勝知事が率先して他県の抱える課題をほじくりだすのでは、期成同盟会の理解が得られない。

特に、今回の関東車両基地視察では、事前に神奈川県との調整をまったく行わず、視察後にも神奈川県に用地取得の進捗などの確認を行っていない。その点を記者から問われると、川勝知事は「神奈川県の記者も来ていたので、神奈川県の担当者に伝わっている。こちらから聞くまでもない」などと述べた。偶然の視察という不確かな情報を基に、用地取得が進んでいないと指摘したことは黒岩祐治・知事に真っ向からけんかを売ったことになる。

知事会見と同じ8日に行われたJR東海の会見で、金子社長は「川勝知事が他県の工事状況について、何か特別の情報を持っているのかわからないが、(関東車両基地の)土地の大体半分くらいは取得している。用地を取得したところから工事を進めて工期の短縮を図る。2027年の開業は静岡県の工事ができていないので難しい状況だが、他の工期・工程は緩めず、関東車両基地の工事を含めてしっかりと進めていきたい」などと述べた。

当然、川勝知事は8日の会見内容を承知して、9日に報告書を沿線知事に送っている。13日の面談でも金子社長は同様のことを述べたが、まったく意味をなさなかった。

言いたい放題の川勝知事

川勝知事は9月22日の定例会見で、あらためて、「神奈川県の用地取得の失敗で、2027年の開業は不可能だ」などと黒岩知事の責任を追及した。さらに、「開業の遅れで長期債務残高が膨らみ、JR東海のビジネスモデルは崩壊に近い状況であり、不測の事態を招いている(金子)社長は経営責任を取らなくてはならない」などと厳しい意見を述べた。他県の工事進捗状況やJR東海の経営責任まで首を突っ込んで、言いたい放題の川勝知事へ「期成同盟会」は“レッドカード”をつきつけるしかないだろう。

まずは9日に送った報告書の中で、川勝知事は「中央新幹線の早期建設の実現を強力に推進するためには、沿線地域の住民に対し、正しい情報を提供する必要がある」と記しているから、これまで静岡県民に説明してきた川勝知事「命の水」が正しい情報なのか、問いただすべきである。

9月8日の知事会見と同時に、静岡県庁東館に掲示された「命の水」の書(筆者撮影)

拙著『知事失格リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)で、川勝知事がお題目のように唱えてきた「命の水を守る」は静岡県民に情緒的に訴えるキャッチフレーズでしかなく、62万人の「命の水」は、実際は26万人に過ぎず、その26万人も水不足に悩まされたことはないことを明らかにした。

もし、地域住民に正しい情報を提供する必要があるならば、「期成同盟会」は川勝知事に「命の水」が真実かどうかを聞いたほうがいい。リニア静岡問題を解決するのに、金子社長のように川勝知事の誠意に期待することがムダであることは、今回の面談でも明らかだ。

小林 一哉 ジャーナリスト

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こばやし・かずや / Kazuya Kobayashi

1954年静岡県生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。2008年退社し独立。著書に『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)等。

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