「旧来型の戦闘」で冷笑されるロシア軍の瀬戸際 ウクライナと米欧の「連合国」体制が押し破るか

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軍事筋によると、反攻作戦を前にウクライナ軍は巧妙な砲撃でヘルソンのロシア軍自体も追い込んでいた。

当初、1万2000人のロシア軍部隊がいたが、ウクライナ軍はヘルソンにある司令部と通信施設をハイマースで激しく砲撃した。このため司令部は部隊を残したまま、約200キロメートルも離れた東岸のメリトポリまであっさりと後退した。

ウクライナ軍はその後、メリトポリの司令部にも再三砲撃を加えている。このため司令部と部隊が通信上も完全に切り離された状態になった。部隊には応援に来た3000人規模の部隊も合流したが、司令部と切り離されたことで士気喪失状態という。

補給が苦しくなったにもかかわらずロシア軍がヘルソンへ部隊を増強したことについて、ロシアの有力な軍事評論家であるユーリー・フョードロフ氏は2022年8月半ばに、ウクライナの「戦略的罠」にはまり降伏するか敗走するしか道がなくなる可能性を指摘していたが、文字通り、そうなってしまったようだ。ハイマースは、約70キロメートルの射程と精度の高さ、使い勝手のよさで優れており、ウクライナ軍にとって「ゲーム・チェンジャー」となっている。

旧来型の戦闘に終始するロシア軍

さらにウクライナ軍は2022年8月初旬から、クリミア半島の軍事施設や交通要衝を標的に地元のウクライナ人住民と協力して、パルチザン攻撃も継続している。この結果、クリミアから鉄道で軍事物資を送り出すことが一層難しくなった。同時にヘルソンなどでは住民の事前避難も進めていた。ウクライナ人住民に多数の死者を出した東南部マリウポリへのロシア軍の凄惨な攻撃を念頭に、反攻作戦での民間人の死者をなるべく少なくする配慮なのだろう。

ロシア軍は多数の将兵、民間人の死者を顧みずに砲撃戦を繰り返す、旧ソ連軍型戦争を採用している。軍事筋は、ウクライナ軍がこれとは一線を画した「頭を使った21世紀型の新たな戦争」をしようとしていると指摘する。ウクライナ軍は、兵力消耗型のロシア軍の将兵について「大砲の餌」と憐れんでいる。

反攻開始に当たって2022年8月30日にテレビ演説したゼレンスキー大統領も、ロシア軍兵士に対し「生きたければ自宅に戻るか、捕虜になるしかない」と部隊離脱を呼び掛けた。これはただでさえ士気低下が著しいと言われるロシア将兵の動揺を誘う心理戦とみられる。

反攻作戦開始を受け、戦況の行方とともに焦点になるのは、プーチン政権が2022年9月11日の実施に向け最終的準備をしている占領地での住民投票だ。東部ドンバス地方のルガンスク、ドネツクの両「人民共和国」に、南部ヘルソン州とザポリージャ州を加えた4地域で行うべく準備が進んでいる。プーチン政権としては、形だけの「住民投票」を経て違法にクリミア併合を宣言した2014年の「クリミア・シナリオ」を再現する狙いとみられる。

しかし、ウクライナ軍がヘルソンなどで奪還地域を広げてくれば、住民投票は事実上延期、ないし中止される可能性が高い。そうなればロシアへの「編入宣言」どころではなくなるだろう。

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