稲盛氏を中国の超大物企業家が尊敬する深い理由 ファーウェイ、アリババ、バイトダンス創業者も

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稲盛氏の影響は、30~40代のIT起業家にも及ぶ。ショート動画「TikTok」を運営するバイトダンスを創業し、30代にして600億ドル(約8兆3000億円)の資産を築いた張一鳴(38)はその代表格だ。

張氏は26歳のときに、『生き方』を手に取った。中国の名門大学でITを学び、テック企業を渡り歩いた張氏は、「(稲盛氏の考え方は)観念的すぎる」と思いながら読み進めていたが、「仕事に励むことは修行」という文章に行き当たり、共感を覚えたという。

トランプ前政権からTikTokをアメリカ企業に売却するよう迫られた際、張氏は社員向けのメッセージなどでたびたび「本質的な解決を図る」ことの重要性を訴えた。中国の経営学者やメディアは、彼の発言に稲盛フィロソフィーの影響を見ている。

バイトダンスの創業者も「生き方」を読む

一方で興味深いのは、張氏が『生き方』を読んだのが、2007年に江蘇省無錫市で中国最初の盛和会が設立された翌年で、稲盛ブームが起きる前だったことだ。

彼は同郷の先輩で、中国最大のフードデリバリー企業「美団」を創業した王興氏(43)に、「成功はコピーできるのか」と質問し、京セラとKDDIの2社を成功させた稲盛氏の著書を読むよう勧められたという。ちなみに王興氏も資産額約1兆円(フォーブス2019年富豪ランキング)の大富豪だ。

中国トップクラスの清華大学でコンピューターを学び、アメリカのデラウェア大学の博士課程に進学した典型的な中国人理系エリートもある王興氏は、2014年の中国メディアのインタビューで「中国の経営者で稲盛和夫氏の境地に達している人はいない」と語っている。

「IT業界の若手起業家」として頭角を現しつつあった王興氏は当時、「ビジネスの知見は、子どものころから読んできた企業家の伝記から得ている。(黄金期のフォード・モーターの社長を務め、クライスラー会長に転じたアメリカの自動車業界の英雄である)リー・アイアコッカ氏、(パナソニック創業者の)松下幸之助氏、(三洋電機創業者の)井植歳男氏に特に強い印象を受けた」と語った。

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