J. R. R.トールキンの原作を最大限に尊重しつつ、新「ロード・オブ・ザ・リング」として価値を高めているのは、ドラマの命運を握る現場総責任者のJ. D. ペインとパトリック・マッケイの手腕によるものも大きそうです。ただし、ペインとマッケイの2人は共同タッグでこれまで脚本家として活動していたものの、脚本づくりから監督業までドラマ制作全体を統括する「ショーランナー」と呼ばれる立場の実績はこれまでゼロ。Amazonの制作部門であるAmazonスタジオから指名を受け、白羽の矢が立った2人です。
超ヒットメーカーにアドバイスを求めた
先のムンバイのアジア・プレミアに出席したペインにも話を聞くと、この大役を引き受けるかどうか、まずは「J. J. エイブラムスに真っ先に相談した」そうです。この作品にエイブラムスは関わっていませんが、映画は『スター・ウォーズ』シリーズ、ドラマは『LOST』といった作品を手がける超ヒットメーカーにアドバイスを求めたわけです。
そのとき、エイブラムスに言われたのは「直感を信じろ。でも、多くは知らないと言っておけ」という言葉。ペインはマッケイとこれを糧に謙虚に臨み、イギリス公共放送BBCの最長ドラマシリーズ「ドクター・フー」のウェイン・チェ・イップ監督や『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のJ. A. バヨナ、『恋人たちのパリ』などのシャーロット・ブランドストームらと共に作り上げていったのです。
イェール大学で英文学を専攻したペインの原作に対する深い造詣も役立ったことは「トールキンは決して寓話的な作品を作りたかったわけではない」と説明する言葉からも伝わってきます。「どんな文化や時代においても、誰もが自分自身を見出すことができる作品を作りたかったからこそ、善と悪や、権力の腐敗、崖っぷちから這い上がる人生を物語に投影しているのだと思います。歩き続けるためのインスピレーションを与える作品なのです」とも続けました。
そして「初めてショーランナーを任された私もまさに崖っぷちにいるような気分でした。『指輪物語』のフロドのように責任を背負っていかなければならないと思いましたよ」と、粋な言葉を選んだペイン。制作裏話まで惹き込まれる物語性があります。
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