BTSのRM語る「アート業界のために僕ができる事」 アートの世界でも一目置かれる存在に

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RMは、アートサポーターの役割を果たす中で、韓国アーティスト、クォン・ジンギュ制作の馬のテラコッタ彫刻を、5月まで開催していたソウル市立美術館の回顧展に貸し出し、2020年には1億ウォンを韓国の国立現代美術館(MMCA)に寄付した。その結果、絶版となっていたアートブックが再版され、図書館に配本することができた。

政府系機関である韓国文化芸術委員会は後に、彼をアート・スポンサー・オブ・ザ・イヤーに認定した。「われわれは、世界的に影響力のあるRMが美術愛好家であることを嬉しく思います」と、MMCAのユン・ボムモ館長はメールで語った。

アートとの出会いは「偶然だった」

この世界的影響は計り知れない。BTSのユーチューブチャンネルの登録者は、7000万人以上(K-POPアーティストでこれを上回るのはBLACKPINKだけだ)、RMの個人インスタグラムのフォロワーは3700万人に上る(MMCAのフォロワーは20万人だ)。この夏スイスで開催されたアート・バーゼル・フェアを訪れた際に、35分に渡って収録されたVlogは、約600万回の再生回数を記録した。閉鎖的で偏狭な世界にとって、彼は夢の大使かもしれない。

BTS、RM
(写真:Dasom Han/The New York Times)

自らのビジュアルアートへの情熱は「セレンディピティ、まさに偶然の出会い」を通じてもたらされたと、RM(本名はキム・ナムジュン)は語る。ソウル近郊で育った彼は、両親に「美術館に連れて行ってもらったけれども、それほど楽しかった記憶はありません」と言う。

2018年のコンサートツアー中、ホテルの部屋に座って休憩時間に何をしようか考えていたRMは、思い切ってシカゴ美術館に行くことにした。スーラとモネの絵画が彼の心を捉えた。「スタンダール症候群にかかったかのようでした」とRMは言う。

スタンダール症候群とは、アートの鑑賞者が、ふらつきや心拍数の上昇といった身体的な症状を呈する疾患のことだ。複製品でしか見たことのない作品を実際に見たときの衝撃は大きかった。「わあ、と思いました。本物のアート作品を見ることができたんです。すごい体験でした」。

アートの話になると、ただでさえエネルギッシュなミュージシャンであるRMは、特に興奮した様子になる。通訳がいたのだが、だいたい英語に切り替えて話していた(RMはとても流暢で、「フレンズ」を見て学んだと語っている)。「17歳の時、BTSのことがあったので勉強をやめたんです。練習生だったから」と話し、すべてのレッスン内容を列挙してくれた。

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