小野薬品と塩野義製薬、株価上昇の共通点 がん・エイズ治療薬への期待が膨らむ

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小野にとって、オプジーボは実に12年ぶりの自社創薬だ。実は小野ががんの治療薬に参入するのは初めて。しかも、がんを狙っていたわけでもなかった。小野は「化合物オリエント創薬」という独特の創薬方針を持つ。何に効くかわからないが、面白い化合物をもとに治療薬作りを試みるというものだ。

しかし、こうした手法は当たれば大きいが、リスクも高い。1980~1990年代には、多くの化合物を保有する脂質代謝系や酵素阻害剤の分野で「世界初」や「日本初」の薬を多く生み出したが、2002年を最後に自社創薬は途絶。他社からの製品導入でしのぎ、空白の12年を経てようやく日の目を見た。

塩野義は悲願の海外開発へ前進

一方、塩野義にとってテビケイは、グローバル展開におけるステップアップでもある。塩野義は現在の主力である高脂血症薬「クレストール」、そして今回のテビケイと、大型薬の創出にコンスタントに成功してきた。しかし、自社創薬製品を自ら海外展開した経験がない、という悩みがあった。

開発途中の新薬を他社に導出してロイヤルティ収入を得るのは一見効率的だが、導出先の都合で開発が中止されるなどリスクがある。そのため、自社で海外展開を増やすことを目指している。

クレストールでは初期臨床試験まで実施した後、海外での開発と販売をアストラゼネカに任せた。テビケイでは一歩進んで、海外で共同開発を行い、海外での経験を積んだ。

長年の苦節を経て手に入れた金の卵を大きく育てられるか。期待は高まる。

「週刊東洋経済」2015年2月28日号<23日発売>「核心リポート02」を転載)

長谷川 愛 東洋経済 記者
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