静岡リニア、川勝知事「言行不一致」がまたも露呈 反対の根拠、「62万人の命の水」は本当なのか

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一番問題だったのは、燕沢の視察で川勝知事が新たな課題を突き付けたことだ。

JR東海担当者は高さ65m、長さ290m、奥行き600mで、トンネル工事で発生する残土の大半、約360万立方mを盛り土する計画を説明した。この説明に対して、過去に土石流が起きていることを指摘したうえで、知事は「深層崩壊について検討されておらず、残土置き場にふさわしくない。極めて不適切」と強く否定した。

JR東海は、残土置き場として標高約2000mに予定した扇沢を山体崩壊の危険性から取りやめた経緯から、燕沢での崩壊対策などを県専門部会で詳しく説明してきた。この中で、過去の論文等を基に燕沢での深層崩壊の可能性は非常に低いことも説明している。ところが、今回の視察で、川勝知事は燕沢に対して強い否定意見を述べた。今から燕沢の代替地を探すのは極めて困難であり、JR東海がさらなる対応を迫られることは必至だ。

JR東海の提案した東京電力・田代ダム取水抑制案を支持する考えを表明する早川町の辻一幸町長(筆者撮影)

田代ダム視察に川勝知事と同行した、山梨県早川町の辻一幸町長が「大井川、早川は間ノ岳が源流であり、いうなれば同じ流域だ。南アルプスのリニアトンネル建設を成功させることで地元を活性化させていくことがわたしの使命」などと述べ、JR東海提案の東京電力・取水抑制案を強く支持する意向を述べた。

これに対して、川勝知事は「濁水ではなく清流の水が戻ってくるのだから、田代ダム取水抑制案の実現に向けて県専門部会でJR東海は説明してほしい。田代ダムの取水抑制案は地域貢献であり、リニア工事中の全量戻しにはならない」などと県外流出の課題解決ではないことを明らかにした。

辻町長の熱意を称賛した知事発言が非常にわかりにくかったため、9日の定例会見で、各記者が知事の意向を確認した。川勝知事は「全量戻しとはトンネル掘削中に出る水をちゃんと循環させて戻すということで、中間報告の中身とは違う」など田代ダム取水抑制案は全量戻しにならないと説明した。流域首長や山梨県知事らが一定の評価をする田代ダム取水抑制案を否定した。

今回の視察での発言は、「スピード感を持って課題解決を図る」どころか、これまでの議論を台なしにしてしまい、大幅な時間を要する対応策をJR東海に迫ることになった。

「発生土置き場には無理」と言うが…

川勝知事は8日、記者たちとは別行動で、2018年6月のJR東海と静岡市との協定で建設される県道トンネル計画地を視察した後、「トンネル建設で発生する32万立方mの残土置き場に問題があり、トンネルは1ミリも掘られていない。4年間何をしてきたのか」などと静岡市を批判した。

この中で、地元の井川地区の建設業者、長島建設に立ち寄って、発生土置き場の見解を聞いたとしたうえで、知事は、「長島(吉治)社長が発生土置き場には無理だなどと言っていた」と紹介した。さらに、9日の会見でも「昨日のあの久保山(残土置き場予定地)について、建設会社のトップが、残土の数字を見て、こんな狭いところにこれだけの量は入らないとおっしゃっていた」などと再度、長島氏の発言を紹介した。

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