静岡リニア、川勝知事「言行不一致」がまたも露呈 反対の根拠、「62万人の命の水」は本当なのか

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この発言について、筆者が長島氏に確認すると、知事が突然、会社に訪れたのは事実だが、長島氏は「久保山がどこかと言うので場所を教えただけ。久保山が発生土置き場に無理だなどとはひと言も言っていない」と川勝発言を否定した。長島氏は地元の悲願として、一日も早いトンネル開通を望んでいる。

また、静岡市は「基本合意から着工までの約4年間はルート決定、地主との交渉や保安林の指定解除などの手続きに時間を要した。山中のトンネル建設はそんなに簡単ではなく、現在のところスケジュールに遅れはない」と反論した。

長島氏に関する川勝発言が真実なのかうそなのか判断するのは難しい。ただし、政治家が平気でうそをつくことはよくあることだ。8日の視察と9日の期成同盟会での「言行不一致」は、政治家の川勝知事には意図するところがあるのかもしれない。

高速道路には「全量戻し」を求めない?

9日の定例会見で、地元テレビ局の記者が「知事就任以来、13年の間に、中部横断自動車道とか新東名など、鉄道以外でもさまざまな公共工事が行われている。今後、行われる工事に対しても、(県外流出する湧水の)全量戻しを求めていくという理解でよろしいか」と質問した。

これに対して、川勝知事は「リニアに関連して、あれが62万人の命の水になっている。しかも、(大井川の水の状況は)カツカツの状態になっているということだから、全量戻しというのは、掘削中に出るすべての水を戻すことだと有識者会議で言っているわけで、(JR東海のリニア工事という)個別具体的な話だ」と答えた。

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この発言に対して、記者は「静岡経済新聞の小林氏(筆者)が本(『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』飛鳥新社刊)を上梓されて、62万人というのは事実ではなくて、実際は26万人ではないかという記載があった。この本の中には、知事がうそを述べているという記述もある。(同書を)読んだ後、事実でないということであれば知事は法的措置等を取るのか?」と尋ねた。

川勝知事は「いちいち、いちいちですね、すべてのジャーナリストが書かれたことに対処するという、いまのところはそういうスタンスを持っていない」などと回答した。

筆者は、62万人の「命の水」が真っ赤なうそであることは同書に詳しく記した。川勝知事は同書を読んだうえで、リニアトンネル工事批判の論拠とする62万人の「命の水」が本当に真実なのか、ちゃんと説明すべきである。

小林 一哉 ジャーナリスト

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こばやし・かずや / Kazuya Kobayashi

1954年静岡県生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。2008年退社し独立。著書に『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)等。

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