エネルギー危機がテキサス大基金の追い風に 環境破壊を手助けしつつ教育費を稼ぐという矛盾
米テキサス大学システムは毎日、米最大の油田内で管理している鉱物資源豊富な土地から600万ドル(約8億2300万円)を稼いでいる。資金集めや投資運用ではなく、石油と天然ガスからの収入で同大の基金はハーバード大学を抜き全米の高等教育機関としてトップを狙う位置にいる。
テキサス大はデラウェア、ロードアイランド両州を合わせた面積に近い210万エーカー(約8498平方キロメートル)の土地をパーミアン盆地で管理。環境を意識した行動を取る他の大学が化石燃料の保有を減らす中で、テキサス大は保有地をコノコフィリップスやコンチネンタル・リソーシズのほか250社近い石油採掘会社に保有地をリースしている。
テキサス大が管理している土地の年間収入は2022年度、過去最高を更新する方向だ。原油価格急騰と同盆地内での生産が増えているためだ。ロシアがウクライナで始めた戦争をきっかけとするエネルギー危機を受け、原油価格は今年、一時1バレル=120ドルに達した。21年6月時点でテキサス大の基金規模は429億ドル、ハーバード大は532億ドルだが、テキサス大は石油・ガス収入でその差を縮める見込みだ。
エール大学経営大学院のウィリアム・ゴーツマン教授は「誰もが資金不足の可能性に直面している今、テキサス大は臨時収入を得ている」と指摘する。
石油・ガス収入はテキサス大を孤立させることになるが、流動性懸念を払しょくし、運用担当者に投資のチャンス与えることに寄与するだろう。それにこの収入は、現金そのものだ。同大より裕福な大学はプライベートエクイティー(PE、未公開株)やベンチャーキャピタルを通じて資金運用を図るのが一般的だ。前年度のこうしたPE・ベンチャーキャピタル投資は記録的なリターンを上げたが、仮にテキサス大の運用成績がマイナスだとしても、石油・ガス収入が同大基金の価値を守る要因となる。
ハーバード大など多くの大学基金は今年、運用成績がマイナスとなる公算が大きい。ブルームバーグのデータによると、ハーバード大の10年間の年率リターンは昨年6月時点で、米北東部の名門大学8校から成るアイビーリーグ最下位だった。テキサス大が前回、エール大を抜き全米で2番目に裕福な大学となったのは18年。原油高が理由だ。
ただ、世界中で気候変動対策としてクリーンなエネルギー資源の採用が進んでおり、テキサス大がいつまで石油収入に依存できるかは疑問が残る。
その上、エネルギーが一大産業となっているテキサス州では環境破壊が顕著だ。油田・ガス田で余剰ガスを焼却処分する「フレアリング」が大気を汚染する業界の慣行となっていることに加え、油田の廃水処理のせいで、同州は全米2位の地震の中心地になろうとしている。
環境保護団体「エンバイロメント・テキサス」のエグゼクティブディレクター、ルーク・メツガー氏は「これがテキサス大と高等教育の大きな収入源であり、絶対的と言っていいほど必要であることは認識している。だとしても、どれだけ代償を払えばいいのか」と問い掛ける。「テキサスは記録的な気温上昇や山火事、干ばつといった地球温暖化がもたらす最悪の影響の一端を経験している」と話す。
だが、テキサス大には大きな保険も備わっている。テキサス州西部に広大な土地を保有しており、こうした場所は風力・太陽光発電プロジェクトにうってつけだ。
土地管理を担うテキサス大ユニバーシティー・ランズのウィリアム・マーフィー最高経営責任者(CEO)は「大規模な風力・太陽光発電」が可能で、「こうした分野や他の新興エネルギーで相当の成長を見込んでいる」と述べている。
原題:University of Texas’s Oil Land Could Make It Richest US School (抜粋)
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著者:Janet Lorin、Sergio Chapa
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