25年で激変した「香港」中国返還前の乗り物の姿 地下鉄は発展途上、2階建てバスや船が大活躍

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香港では今も「イギリス領時代の名残り」で、ほとんどの路線バスは2階建て車だ。返還当時は冷房のないバスも少なくなかったが、近年は積極的に最新鋭バスを導入。無料Wi-Fiサービス付き車両もある。

現在、香港の市街地を走る主なバス会社は、九龍バス(KMB)、シティバス、ニューワールドファーストバス(NWFB)の3社だが、返還前までの数十年間、九龍半島側は九龍バス(KMB)、香港島側は中華バス(CMB)の2社がほぼ独占的に運行していた。KMBはベージュに赤色、CMBは青と白のツートンカラーで(ラッピング広告がない場合)、当時を思い出すと、地区別にしっかりと運営が2分されていた印象がある。

中華バス
右側がCMBバス、奥に見えるのはKMBの当時新型の冷房車。CMBはサービス悪化で返還後の1998年に路線運営権をすべて剥奪された(筆者撮影)

しかし、あまりにも寡占状態が長期間続いたため、1980年代からCMBはサービスの悪化が著しくなった。そこで香港政庁は同社の香港島内路線の運営権を次々と剥奪。最終的に返還翌年の1998年、香港特別行政区はCMBの路線運営権をすべて取り上げる事態となった。その後同社は細々と貸切バス業務などを行っていたが、2015年に法人閉鎖の憂き目に遭っている。

CMBの多くの路線は、新参のシティバスとNWFBの2社が引き受けた。両社はサービス向上の意味合いもあって、冷房車両をどんどん投入。「混み合う地下鉄よりも、バスに座ってのんびり仕事」という利用客が増えたのも返還前後のことだ。

変わらない乗り物といえば…

香港の軌道交通を語るうえで忘れてはならないのは、香港島を走る2階建ての路面電車(トラム)、そして夜景見物スポットとして有名なビクトリアピークとを行き来するケーブルカー「ピークトラム」の存在だろう。どちらも100年を超える歴史ある乗り物で、今もなお香港の人々の足として活躍している。

1997年の香港トラム
ひしめく看板の下を走るトラム=1997年(筆者撮影)

トラムの外観は返還よりだいぶ前からほぼ変わっておらず、冷房もない。ただ、大半はスピードを調節するマスターコントローラー(いわゆるマスコン)が「直接制御器」から、ワンハンドルの「間接制御器」に更新されている。返還後には冷房車も造ったが量産されず、今も変わらず非冷房車が窓を開け放って走っている。

そんな中で、撮影対象として「1日中待ってでも撮りたい」といわれるのが20世紀前半の車体外観を保つ「120号」だ。返還前の1990年前後に解体修理を実施、その後に制御器の交換などもあったが、今でも「クラシカルな外見」は地元市民に人気だ。

ピークトラムは、1888年開業とトラム(1904年開業)よりもさらに歴史が古い。つい先頃までは1989年に導入された2両編成のエンジ色車両が走っていたが、現在、「6代目」とされる新型車両の準備が進んでいるところだ。

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