気象災害から鉄道を守る「手だて」はあるのか 東北を襲った豪雨、九州の例から学べる?

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わが国においては鉄道の防災意識が高く、近年では大雨や災害が予想される時間帯には、列車の運行を停止させる「計画運休」なども行うようになった。また、万が一災害に巻き込まれた時にも、人命最優先で、避難計画も万全であろう。

しかし、これからの鉄道防災に関しては、災害を防ぐだけではなく、早期の復旧のあり方も重要なのではないかと思う。「防災+救難+早期の復旧」、この3つがセットになれば、未来に鉄道を残せるヒントになるように思える。

災害により被害が出た地方ローカル線でも、「鉄道」として復旧できれば、人口流失やそれに伴う過疎化も軽減できるかもしれない。これには国の支援や知恵が必要になってくるが、鉄道の早期復旧が、経済の復興にも直結してくることは言うまでもない。

鉄道は地域のインフラ

ただ早期復旧といっても、多額の費用を有する。特に地方の鉄道や沿線の自治体にとっては大変な負担となってしまう。そこでローカル線は上下分離方式を基本にしてはどうだろう。上下分離方式は不採算に苦しみ経営難であるローカル鉄道の存続を図るために導入される例もある。

災害が起きると、国が管理する国道や自治体が管理する県道などは、早期に復旧を果たしている。ならば線路を国や自治体が管理すれば、早期の復旧が期待できるのではないか。この上下分離方式は、欧州の多くの国が採用しており、個々に形は違うものの、日本でも青い森鉄道など数社が採用している。2025年度に復旧による全通が予定されているくま川鉄道も、開通後は上下分離方式となる予定だ。上下分離を1つの方法としながらも、鉄道事業者それぞれの事情は異なるはずだ。今後そういった部分もさらに取材したい。

現在のローカル線の状況からすると、残念ながら鉄道事業者のみでの災害復旧には限界がある。地方創生を唱えるのであるならば、国は鉄道も地域のインフラとして扱い、鉄道を今まで以上に町の顏として育て上げていくべきだと感じている。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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