「移民獲得競争」に背を向ける日本はスルーされる 移民拒否ならそこそこ豊かな生活の保証もない

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まだ学術的に検証されたわけではありませんが、個人的には移民が増えると1人当たりGDPが増えるという因果関係があると思います。そして、従来の工業社会から知識社会に転換したことが、この関係を強めています。

20世紀までの工業社会では、決められた目標に向かって組織のメンバーが意思統一することが重要でした。たとえば、ガソリン自動車の製造では1台当たり数万点の部品を扱うことから、1人では作業できません。多数のメンバーが設計図・工程表を理解し、前後の工程で密接に情報共有して共同作業を進めます。

ここで情報共有のカギになるのが、言語と情報理解力。日本人は、みな日本語をしゃべるので言葉の壁がありませんし、基礎学力が高いので複雑な情報を正確に理解することができます。工業社会では、多言語かつ国民の基礎学力が低い諸外国よりも、日本が有利でした。

金太郎飴の日本はイノベーションに不向き

ところが、知識社会になると、勝手が違ってきます。知識社会では、他社にはない斬新なアイデア=イノベーションを産み出すことが重要です。そして、経済学者シュンペーターがイノベーションの本質を「新結合の遂行」と喝破した通り、異質な情報が交わり合うことがイノベーション創造のカギです。

日本人は、みなよく似た考え方をしますし、違った考えを持っていても表立って口にしません。一方、移民が多い国では、自然に異質な考えが混じり合います。知識社会では、金太郎飴の日本よりも、異質性が高い移民国家の方が有利なのです。

つまり、20世紀までの工業社会では日本の同質性が有利に働いたのに対し、21世紀以降の知識社会では移民国家の異質性が有利に働くようになりました。これが、21世紀になって日本が凋落する一方、移民国家が台頭してきた大きな理由です(もちろん、それだけが理由ではありません)。

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