ゼネコンに震災特需は早計 インフラ工事で実績豊富な鹿島、大成など有利【震災関連速報】

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しかし、震災特需となるかどうかは現段階では見通せず、早計と言わざるを得ない。その理由は、国・地方自治体の厳しい財政状況が第一。被害が広範囲にわたるため、計画どおりに実際の工事に当たる作業手順をゼネコン側が整えられるか不透明なことが第二。震災復興予算の計上と引き換えに、他の地域の公共予算は、防災関連を除くとさらに圧縮するとみられることが第三である。

こうした前提であえて、東北関東大震災の復興特需が見込まれるゼネコンを挙げると、東北や北関東の太平洋側で土建実績のあるところが挙がる。発祥が西日本よりは東日本という見方であれば、中興の祖である鹿島精一翁が盛岡出身で、東北地方の大規模工事に深く係る鹿島を筆頭に、大成建設、清水建設、鉄建建設が、業績面では震災関連の復旧工事が上乗せ要因となりそうだ。

また、専門性の高い東鉄工業、NIPPO、日本道路、前田道路らが復旧工事の需要が見込まれる。なお、国・自治体や民間は財政難であるので、起債などで工事資金を調達して、復旧工事を実施する必要がある。つまり、資金調達は金利負担など財政をさらに圧迫するので、復旧が一段落すると、その反動減が起こることは目に見えている。

いずれにせよ、震災復旧工事は、資材や人員の手配を含め難しい工事が予想され、採算面でも厳しいことは覚悟せざるをえない。ゼネコン業界が、震災復旧を契機に国内の大型工事の需要を先食いするという構図だ。よって、国内の公共事業が震災復興に配分が大きくなると予想される中で、受注がうまく取れるゼネコンと、取れないゼネコンの業績格差が広がるかもしれない。

古庄 英一 東洋経済 記者

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ふるしょう えいいち / Eiichi Furusho

2000年以降、株式マーケット関連の雑誌編集に携わり、『会社四季報』の英語版『JAPAN COMPANY HANDBOOK』、『株式ウイークリー』の各編集長などを歴任。

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