公的イベントで赤字の「個人負担」はアリ? 補填を約束する「覚書」の問題点とは

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「今回の問題について、初めはあまり気に留めておらず、個人的に赤字を補てんするなんて、局長はすごい人だな、としか思っていませんでした。

一般的に、個人で赤字を補てんしても、寄付と同様に『個人の自由』です。税務上(贈与税)の問題はあるけれども、法律的にみて、そんなに大きな問題はないだろうと思っていました」

しかし、西口弁護士は、事前に個人負担に関する「覚書」が結ばれていたことを受け、「それはまずいでしょ」と考えが変わったという。西口弁護士は「あくまで私見ですが・・・」と断りながら、次のように述べる。

「いくら約束だったとしても、今回の覚書の内容は『公序良俗違反』に該当して無効となる可能性があります(民法90条)」

どうして、そのように言えるのだろうか。

覚書が無効になったら、どうなる?

「一般的に、大阪府は力の強い大きな組織です。そのような組織が、関連団体である大阪観光コンベンション協会(大阪観光局)との間で『損害が出た場合、責任をとらない』という覚書を交わしていたわけです。

両者の力関係からすれば、対等の立場で覚書を交わしたとは、到底考えられません。大阪観光コンベンション協会と加納氏の間の覚書も同様だと思います」

さらに、西口弁護士は次のように続ける。

「行政法の観点からしても、国や地方公共団体が当事者となる『行政契約』の内容が、明らかに不合理である場合、無効とされる場合があります。

また、本件とは直接関係はありませんが、会社がその地位を利用して取引先に不当な要求をしたような場合、独占禁止法の優越的地位の濫用にあたるとして違法になるとされています。

このような考え方は、今回の覚書が有効かどうかの判断に影響を及ぼすものといえます」

もし仮に、覚書が無効になれば、どうなるのだろうか。

「赤字を自費負担する理由はなくなりますので、加納氏には、補てんした約2700万円の返還を求める権利が発生するでしょう。もちろん、実際に訴訟になれば、さまざまな事情を考慮して判断されるわけですから、必ず、このような結論になるとは限りませんが・・・」

西口弁護士はこのように説明していた。

西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所

 

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