安倍首相の「本気」に屈した「農協」 農民から離れた全中の敗北は必然だった

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元々農協とは、本来、農業者の所得や地位向上ための自主自立の共同組織である。ところが、戦後食糧難の中、ヤミ米の価格の方が高いということで、コメが闇市場に流れていった。それでは、貧しい人はコメが食べられないということで、国民に安い価格で平等に配給できるように食糧を統制・管理する必要があり、「官製」の協同組合となった。

一方で、農協は農工間の所得格差を埋める本来の役割も果たしていたが、経済成長を続ける日本社会において、米価も高価格を維持し、次第にその役割を失っていく。それでも、食糧の需給と価格の安定を目的として存在を顕示するが、コメの輸入解禁と農家の米穀販売の自由化の中で1995年食管法が廃止され、農協は形を変えていくことになった。

ところが、農協が存在意義を失うと、その上部団体の全中は困る。そこで地域農協の経営指導や政府との農業政策の折衝などを通して日本農業の推進を目的とし、農協に強固な権限を持ち、中央集権的な方法で日本農政を動かしていく。「日本農業を総合的にサポートする」という表の看板を掲げながら、農協を指導・監査し、日本農業の岩盤規制の温床になっていった。

全中は年間約78億円の賦課金を失うことに 

今回の改革では、農協法に基づいて農協の会計監査・業務監査の権限を有していた全中に対し、これを廃止し会計監査は公認会計士による監査を義務付け、業務監査はそれぞれの農協が必要に応じ、自由にコンサルタントを選ぶことができるようにした。

銀行、信用金庫、信用組合などの金融機関で貯金金額200億円を超える機関では、公認会計士による会計監査が義務付けられている。農協も金融機能を持っていることから、これからは外部監査を受けることで、透明性、健全性を世の中に示す必要に応えられるようにする。一方で、全中から「自由」になることで、農協はこれまでにはできなかった大胆な発想に基づいた改革を取り入れるチャンスが産まれる。

そして、「指導、監督という権限を持っている農協の上部団体」という位置付けをなくすことで、賦課金を強制的に徴収することができない一般社団法人に移行させることにした。ちなみに、全中が全国の700の地域農協から徴収している賦課金は、年間で約78億円にのぼる。

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