「ちむどんどん」なぜ暢子の恋を応援できないのか 6月27日から3週間かけたラブストーリーが不発

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しかし、愛は誰よりも常識的かつ愛情豊かで応援したくなるキャラクターでした。現在も「愛にはもっといい人と幸せになってほしい」「暢子は恋より仕事に励んでほしい」などの声があがっているように、キャラクターの描き分けが逆だったのではないでしょうか。

沖縄の自然と人々の思いで挽回へ

12週から14週にわたるラブストーリーは、連日「あさイチ」で“朝ドラ受け”を行い、朝ドラ宣伝隊長のような立ち位置の博多華丸・大吉にも響きませんでした。

ある日は、華丸さんが「いやもう和彦のマリッジブルーがひどいのよ」、大吉さんが「智の暴走がひどい。大丈夫かあれ。みんな大事なことを言い合ってないから」。別の日にも華丸さんが「われわれが口出すことじゃない」、大吉さんが「もっと早くね、断っておけばよかったのかな」などと苦笑いでコメントしていました。

ふだんは鈴木菜穂子アナに止められるまでしゃべっていることの多い2人が「次進んでいいですか?」と話題を変えようとするケースも少なくありません。登場人物たちが「こうあってほしい」と思う逆をゆくような言動を見せ続けてきたことが2人の朝ドラ受けを暗いものにしているのではないでしょうか。

もともと朝ドラのような長丁場の作品は、「誰と誰がここで出会い、ここでつき合いはじめ、ここで別れる」などのプロット(あらすじ)を最初に固めるのが基本。しかし、作り手たちがパーツを組み合わせるような感覚で物語を設定すると、感情の積み重ねや変化が十分に描かれず、視聴者の共感を得られないケースに陥りがちです。

ネット上には3週間のラブストーリーを見た視聴者から、「黒島結菜と宮沢氷魚が嫌いになってしまった」という声もあがっている苦しい状況だけに、18日からの第15週「ウークイの夜」は重要な放送回になるでしょう。

第15週では、母・優子の結婚話を聞いた暢子と賢秀が里帰りするほか、和彦も仕事で沖縄を訪れることが明かされています。「ちむどんどん」はもともと「沖縄返還50年」を記念した作品だけに、沖縄の美しい自然とそこで生きる人々の思いをたっぷり見せることで、ラブストーリーで感じさせたモヤモヤを吹き飛ばせるか。

そして何より大切なのは、暢子と和彦が今回の経験を生かして魅力的な人物に成長していく姿を描いていくこと。まだまだ挽回の余地はあるだけに、終盤を迎える9月、暢子と和彦が応援したくなるようなキャラクターに成長している可能性は十分あるでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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