一斉授業つらい、特定分野に顕著に高い能力ある「浮きこぼれ」の子と親の悩み アドバンス・ラーナー向けプログラムが日本に

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アドバンス・ラーナーを研究して策定したプログラムCTY

今回、CTYの日本での展開に先立って開かれたオンラインイベントには、ジョンズホプキンス大学で長年CTYの研究に携わってきた専門家も参加した。

アドバンス・ラーナーは才能豊かで、リーダーシップや運動、言葉、音楽などさまざまなところで能力を発揮するが、若いときに育てないと才能が消えてしまうという。またアドバンス・ラーナーは学習能力にも優れ、通常は新しいことを学習するときに段階的に理解するところを飛び越えて認知する。そのため学校では、先生が問いかけた質問に対して「質問の意味を理解していない」「答えが的外れ」と思われることがあるかもしれないが、それは与えられた情報以上のことを理解しようとしている表れだと話した。

とくにアドバンス・ラーナーの子どもは、いわゆる座学のような先生が教えて書き取るような学びの環境は苦手。情報を深く知ることを好み、より広範囲に概念や理論まで理解して、別の分野に適用することを考えるという。自律的に戦略を立てて自分で学習を進めるため、反復学習を嫌い、チャレンジングで抽象的な問題を好む傾向にあるようだ。

そのため、アドバンス・ラーナーの特性を研究したうえで策定したプログラムであるCTYでは、インタラクティブな学びを重視しているという。リアルな世界の“正解が1つではない”複雑な問題について、「なぜ?」と問いながら探究的に考えてもらうのだ。

例えば、子どもの病気の症状を見て、何が原因か、どうすれば診断を下せるのか、さまざまな事柄を関連づけて予測させる。原因はどこにあるのか、環境にあるのか、遺伝子なのか、食べ物なのか……を探らせるのだ。もし原因が環境にあるとわかったら、社会は何をすべきか、そのためのコストはどのくらいかかるのか、子どもが回復するためにどんな助けが必要かなど、問題を複雑化させて考える。その過程でいろいろなトレードオフに直面しながら、高度化させて議論をさせるという。これを個人やグループで行うのだ。

こうした学びを日本の学校や家庭でいきなり実践するのは難しいが、「正しい答えが1つではない問題」を与えるのがポイントだという。アドバンス・ラーナーは完璧主義の傾向があり、間違えたらどうしようと、逆に自尊心が低くなってしまうこともあるので、間違ってもいいから学びは楽しいと感じてもらうことが大事なのだ。

一方で、アドバンス・ラーナーでも学校になじんでいる子どももたくさんいるという。決して社会的な営みができない、学校の仲間と合わないというわけではなく、自身の発達とのミスマッチでカリキュラムが合わないことが多いのである。

親や学校も「アドバンス・ラーナー」の知識や情報が必要

こうしたアドバンス・ラーナーの特徴を持つ子の親たちは、どのような悩みを抱え、これまでどのような教育を行ってきたのか。イベントでは2人の保護者が登壇した。

わが子について「アドバンス・ラーナーではないか? とほかの方から指摘を受けたことがあったが、本当にそうなのか? というのが正直なところだった」と話した保護者の子は、小1のころにハリー・ポッターを読み終えてしまったという。

小学校中学年になると、学校の勉強には興味が湧かなくなっていたものの、家族みんなでボードゲームをするうちに、異常に強いことがわかる。ポーカーの関東大会ではジュニア部門(高校生までが対象)で小学生ながら3位入賞。ゲーム展開を先読みする力や頭の回転の速さ、勝負強さなどの才能に優れていることが見えてきたという。

小中学校は日本の国公立で過ごし、途中学校に行けなくなってしまったこともあった。家庭では本や英語など、子どもの興味を引きそうな教材を可能な範囲で与えていたが、これといったプログラムには出合えなかった経験からこう話した。

「親にも、アドバンス・ラーナーの可能性を持つ子どもを理解するための知識や情報があるといい。そうすれば『勉強嫌い』『怠けている』ではなく、『何がつまらないのか』と考えることができ、子どもを理解できるようになる。いわゆる学力では測れない、学力以外の能力を持つ子をいかに伸ばせるのかという情報と、伸ばせる場所があったらよかったのにと思う」

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