「一律一斉授業」を見直した公立小教員が思う「自ら考え学ぶ力」の育み方 「主体性が出ちゃう場」をつくるのが教員の仕事

「自ら考え、自ら学ぶ力」を育めていなかったという猛省
大窪昌哉氏が授業スタイルをガラッと刷新したのは、2年ほど前のこと。きっかけは、コロナ禍の一斉休校だった。
「休校の間、プリント配布に終始してしまった学校は多く、持て余した時間に何をしたらよいのかわからない子どもたちもたくさんいました。このとき、僕ら教員は結局、『自ら考え、自ら学ぶ力』を育めていなかったんだと、猛烈に反省しました」
そんな猛省と危機感から、「まずは自分が変わらねば」と、大窪氏はオンラインを活用して数多くの講演会や学習会に参加。これまでも「子どもが主役」の学級経営を目指し、プロジェクトアドベンチャー(※1)や会社活動(※2)など、よいと思う実践は取り入れてきたが、休校期間に学びを深める中で、改めて学ぶことの楽しさを実感するとともに「自立した学び手」の育成が必要だと強く感じたという。
※1 米国発の、アドベンチャー体験から学ぶアクティブ・ラーニング・プログラム
※2 企業活動の形を取る、あるとクラスが楽しくなる活動
「一律一斉に教えることが悪いことだとは思わないけれど、同じ課題を同じペースで進めていくことに以前から無理を感じていた」(大窪氏)こともあり、休校明けの2020年6月から担任を持つ5年生の学級で、プロジェクト型学習やワークショップ型の学びを中心とする授業に切り替えていった。

神奈川県逗子市立久木小学校 研究主任
1975年神奈川県横浜市生まれ、横浜育ち。大学卒業後、一般企業の経理部に7年間勤務。30歳で退職、通信制大学で小学校の教員免許を取得して逗子市立沼間小学校で教員人生をスタート。子どもたちとともに学びを楽しみ、みんながイキイキ・ワクワクした時間や場を共創するために、さまざまな学びの場へ参加している
まず始めたのは、米国発のライティング・ワークショップ「作家の時間」。これは、子どもたちが書きたいテーマを自己選択して文章を書き、出版というアウトプットまで行う実践だ。書き方やテーマの選択肢が少ない教科書に沿った指導では、作文を好きになるのは難しいと感じていたため、導入した。
「国語で週に1.5時間を作家の時間に費やすことにしたのでカリキュラムもいじらなければなりませんでしたが、子どもたちの書くことへのモチベーションが上がり、振り返りの際などにも考えや思いを言語化する力が生きるようになっていきました」