地元の足から「アトラクション」に、DMVで大変身 阿佐海岸鉄道が導入「世界初」車両の乗り心地は

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日本各地には、この鉄道に似た過程を経た第三セクター鉄道は多い。国鉄路線として計画されていたものの未開業で、その区間を完成させて第三セクター鉄道となった路線である。具体例として、新潟県の北越急行、兵庫県・岡山県・鳥取県にまたがる智頭急行、岡山県と広島県にまたがる井原鉄道、京都府の北近畿タンゴ鉄道(現京都丹後鉄道)宮福線などがあり、開業していた区間と未開業だった区間があった秋田県の秋田内陸縦貫鉄道、岩手県の三陸鉄道、福島県と宮城県にまたがる阿武隈急行、土佐くろしお鉄道の西部もほぼ同じ例である。

しかし、ここに挙げた鉄道路線に共通しているのが、「計画されていた路線を全線開業させた」ことであるのに対し、阿佐線は徳島側も高知側も盲腸線のまま、一部区間を運行する形態となった。未着工区間があまりに長く、需要も見込めなかったのだ。その結果、阿佐海岸鉄道は10kmにも満たず、全体計画からすると「ほんのわずか」だったので、開業させたメリットが少なかった。四国全体を大局的に考えれば、阿佐海岸鉄道の部分は、JR牟岐線の末端区間としたほうが自然だった区間だ。

そのため、阿佐海岸鉄道は日本でもっとも営業成績の悪い鉄道といわれ、開業以来黒字になったことはなかった。100円稼ぐのに1000円近くの経費がかかっていて、存続を危ぶむ声も多かった。鉄道車両での運行終了時には、車両が2両あったが、1両は1992年の開業時からのもの、もう1両は廃止となった宮崎県の第三セクター鉄道だった高千穂鉄道から無償で譲り受けたもので、車両にも経営の厳しさを感じさたものである。

筆者の記憶でも、近年は外国人も含めてお遍路さんが乗車していたが、高校生がひとり、あるいは乗客が筆者だけだったこともあった。

多くの地方鉄道では、定期乗車券で利用する高校生が収入の大きな部分を占めるが、阿佐海岸鉄道は徳島・高知県境部分を走っていることから通学生もほとんどいなかったのである(地方では居住する県の県立高校へ通うことがほとんど)。

DMVの今後は?

乗車して改めて思うのは、1992年開業と新しいため、鉄道部分はほとんどがコンクリートの高架で、踏切はなく、トンネルが多い。意外にも海は遠望できる程度で、海沿いを走るわけではなくまっすぐ進む。JRの牟岐線などよりずっと立派な設備である。もともと阿佐海岸鉄道が運行していた3駅すべてが高架駅である。その立派な高架上をマイクロバスのような車両が走るので、かなり珍しい光景であろう。

立派な設備ゆえに、いくら利用者が少なくても、線路を廃止にしてしまうのはもったいなく、試行錯誤した結果が、世界初のDMV運行となった気がする。「世界初」を謳い文句に、ここでしか体験できない交通機関に乗ってもらおうというのである。

次ページ観光鉄道として発展することを期待
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