地元の足から「アトラクション」に、DMVで大変身 阿佐海岸鉄道が導入「世界初」車両の乗り心地は

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しかし、予約制では地域の足としての役割が果たせない気がするし、まして通学生などの利用はどうするのだろう、と疑問に思うが、そもそも地域住民の利用が前提になっておらず、地域住民が利用するのはもっぱら並行する路線バスなのだそうだ。実際筆者が利用したときも、観光客、鉄道ファン、そしてお遍路さんと思しき客しか乗っていなかった。

阿佐海岸鉄道は線路と道路双方を運行する特殊な車両、いわば水陸両用自動車のようなもので、地元の足というよりは観光資源として扱われている。沿線にも多くの「世界初」の看板を目にした。

車両は18人乗り。一般的な路線バスよりかなり小振りで、ホテルや旅館の送迎バスといった雰囲気なので立席を受け入れられたとしても2~3人が限度であろう。

車窓はというと、鉄道区間はほとんどが高架とトンネルで、ところどころで太平洋が垣間見られる。いっぽう道路区間はほとんどが太平洋沿いで、海側に座るとずっと海が眺められる。便数が少ないので叶わないが、途中下車してみたいスポットが多数あった。

残念に思ったのは乗り心地であった。線路区間では鉄のレールを鉄の車輪で走っているのだが、一般的なボギー台車を履いた鉄道車両と違って、いわば2軸貨車のようなものなので、線路のつなぎ目での振動が車体に直に伝わってきてしまう。改めてボギー台車である鉄道旅客車両の乗り心地の良さを認識してしまった。

いっぽうバス区間においても、旅館の送迎バスほどの車両で室戸岬の先まで行くので、車内が混雑していると窮屈に感じるかもしれないと思った。スピードがあまり出ないのか、途中何度か路肩に停車しては後続の自家用車やトラックに道を譲っていた。

阿佐海岸鉄道の生い立ち

阿佐海岸鉄道の生い立ちも紹介しておきたい。阿佐海岸鉄道とは、阿波(徳島)と土佐(高知)を結ぶという意味で、徳島・高知の県境部分を運行している。

国鉄時代、いずれは日本国中をくまなく国鉄の線路を張り巡らす計画があり、四国も鉄道だけで一周できる予定であった。牟岐から南下し、室戸岬を経由、さらに西へ進み、現在の第三セクター土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線となっている部分につながり、阿佐線となる計画だった。しかし、未開業のまま国鉄の赤字問題などから計画は頓挫し、民営化の際は牟岐線だけJRに引き継がれた。そして、海部―甲浦間は工事がほとんど完成していたことから、この間だけでも開業させようと第三セクター鉄道となったのである。

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